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第1話 僕のヒーロー
始まりは小学生の時。図書館で貸りた本を読みながら歩いていた僕はガラの悪い上級生とぶつかってしまい絡まれてしまった。
「いってーな!どこ見て歩いてんだよ!」
「ご、ごめんなさい…」
「コイツ男?女みてーな顔してんな」
「本当についてんのかー?服脱がして確かめてみようぜ」
「や、やめて!」
どこからともなく彼は現れて僕に乱暴しようとしていた上級生3人をボール1つで助けてくれた。
「寄ってたかってイジメなんかしてんじょねーよ。かっこ悪い」
「覚えてろよ!クソガキ!」
「中学生が偉そうに…お前、大丈夫か?」
「……」
スーパーマンみたいでカッコよくて泣いていたのも忘れて彼をじっと見つめてた。初めて感じた好きって感情だったと思う。
「本落ちてたぞ。大丈夫か?」
「うん、有難う…」
「お前、名前は?」
「え?…安曇」
「俺、拓真」
それからすぐに拓真が同学年の隣のクラスという事がわかって僕たちはよく遊ぶようになった。
それが高校生になっても続けられるとは思ってなかったけど…そのせいで僕の気持ちは悪化する一方で女々しさに拍車がかかっている気がする。
体育館では週に一度のレギュラーメンバーを交えた練習試合をしていた。体育館中にはボールの音と部員の声援、それとどこからともなくやってくる女子の黄色い声が響いている。
「拓真!シュートしろ!」
「まかせろ」
チームメイトからのパスを受けボールを受け取るとゴール付近まで走り、レイアップシュートを決める
「拓真よくやった!」
「もう一本行くぞ」
練習試合をしている姿を壁に寄りかかりながら眺めつつ二階や五箇所ある出入り口からキャーキャー声援を送っている女子を見つめて小さくため息を漏らす
「モテるなぁ…」
声援を送っている彼女達の目的は拓真であろう事は安曇本人が一番よくわかっていた。なぜなら、自分も目で追っているからで彼女達と同じ感情だからである。
拓真にボールが渡ると今度は少し離れたところからシュートを打ちスリーポイントシュートを決める。
「カッコ良すぎ…」
ため息しか出ない美しいフォームに小さく呟くと声援にきている女子達の甲高い声でかき消されてしまう
試合が終わると選手達が壁際にやってきてその場に座り込む
「はぁはぁ…きっつ…」
「お疲れ様」
安曇が倒れ込んでいる皆んなにタオルを手渡していく
「有難うマネージャー…」
「はい、拓真もタオル」
「あぁ、有難う…」
安曇が持ってきたタオルを受け取り顔を拭いてから声をかけようとしたが逃げるように他の部員の元へ行ってしまった安曇の後ろ姿を見て眉をひそめる
「拓真…お前、今マネージャーに声かけようとした?」
少しむすっとした拓真に声をかけたのは同学年で同じクラスの西川
「あ?…まぁ…一緒に帰ろうかと思って」
「そうゆうのは部活終わってからにしろって部長に言われただろ?忘れたのか?マネージャー部室占拠事件」
「忘れてねーけど…終わってから言おうとするともういなかったりするし」
西川は盛大にため息をはくと拓真の肩に手を乗せて
「わかってんなら極力マネージャーには近付くなよ。お前が近くにいるだけで危ないんだからな」
「…何だよそれ…」
タオルを配り終えた安曇が今度は皆んなに冷たいスポーツドリンクを配っている姿を見つめながら西川の言葉に返事をしていると安曇が二人に近寄ってきてトレイに乗ったスポーツドリンクを差し出してくる
「二人もどうぞ」
「おー有難うマネージャー」
西川が先に紙コップに入ったスポーツドリンクを手に取ると拓真も受け取って
「安曇、今日一緒に帰らないか?」
「え?」
突然の誘いにキョトンとした顔を拓真に向けて思考が停止する
「あちゃー…」
隣で西川が肩を落とす、その間も拓真は安曇を見つめている
「何か用事ある?」
「えっと…用事はとくにないよ」
「そうか、じゃあ部活終わったら体育館の外で待ってて」
「わ、わかった…」
ぐいっと飲み干したスポーツドリンクをトレイに乗せると軽く安曇の頭を撫でて外にある水飲み場で顔を洗おうと歩いて行って
その二人のやりとりを見ていた部員達はヒヤヒヤしながら見守り拓真が離れた事にホッとしていると安曇が頭から煙を出しながらその場にへたり込んでしまう
「誰か氷だー!」
「はい!」
部長が慌てて安曇に近寄り抱き起こすと顔を真っ赤にして気絶している
中でバタバタと動き回っているのも知らず外の水道で頭から水をかぶって顔も洗って濡れた髪をかきあげて安曇から受け取ったタオルで髪や顔を拭いて息を吐いて
「安曇と帰るの久しぶりだな…何話そう…」
内心ワクワクしながら呟き笑みをこぼす拓真。安曇が倒れたのを知るのはもう少し後のこと
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