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第12話 二杯目(8)

 なんとか食べ終えてホッとする。壁にかけられている時計に目をやるが、食べ終えたところで、防災センターに戻るには、まだ少しだけ時間はありそうだった。 「そういえば、昼の勤務は慣れたかい?」  ホワイトさんも、まだ戻らなくていいのか、ニコニコしながら俺に話しかけてくる。何度か顔を合わせてはいても、それほど話をしたことはなかった。意外と気さくで、話好きなようだ。 「あ、はい……でも、それも今日までなんで」 「え?」  俺の言葉が予想外だったのか、ホワイトさんはびっくりした顔をした。 「もともと三日間の代打だったんですよ。で、今日が最終日で」 「……じゃぁ、こうして一緒にお昼を食べるのも……」 「そうですね。夜の勤務の時は、ここ、やってないですしね」  そういって周囲を見渡す。さすがにここで夜食をとる人間は多くないだろうし、採算が取れないだろう。昼間はいろんな店の従業員がそれぞれに食事をしている。こんなにたくさんの人が働いてるんだよなぁ、と、変に感動する。夜はほとんど会うことがないから。 「そうか……上原くんとお昼に一緒になるの、ちょっと楽しみだったんだけどなぁ」 「え、あ、ありがとうございます……?」  寂しそうに言うホワイトさんに、俺はなぜだか、そう答えていた。社交辞令ってやつかもしれないけれど、嫌な気はしなかった。俺は、テヘッと笑うと、一気にお茶を飲み干す。  気が付くと、先ほどまでいたと思った従業員たちが一気に出口へと流れていく。休憩時間が終りの人々なんだろう。俺もその流れに乗るように、トレーを手にして立ち上がる。すると、ホワイトさんも同じように立ち上がった。  むぅ。やっぱ、この人、デカいよなぁ。並んで立つのは、かなり、俺のコンプレックスを刺激する。それに、この綺麗なシルバー・ブロンドの長い髪。男の長髪って、人を選ぶと思うんだけど、ホワイトさんは似合いすげる。余計に、自分の平凡さ加減に、ガックリする。 「よ、夜の勤務に戻ったら、また、朝、カフェに寄らせてもらいますね」  なんとか気持ちを奮い起こして、そう言った。何せ、俺にとっては大事な朝食タイムだし。  そんな俺の言葉に、少し憂い顔だったホワイトさんが、ハッとしたかと思ったら、俺に向かって嬉しそうに微笑んだ。 「そうか。そうだね。楽しみに待ってるよ」  ――おおお。なんだ、この笑顔は。  その瞬間、何かが俺の胸を貫いた。  ビシッと、バシッと、ズキュンと。  そんな感じ。でも、それが何なのか、自分でもよくわからない。  俺はなんとか笑顔を貼り付かせると、さっさとトレーを返すために出入り口のほうへと歩き出す。  なんなんだ、この感覚は。  背後にホワイトさんの存在を感じつつ、困惑しながら頭を捻った。

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