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抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい51

 横目でちらりと傍にある顔を見た表情は、すでに曇りがないものに変化したので、黒ずくめの男はさっさと身を引き、シートベルトを締め直す。 「生まれ変わった主に逢うために、おまえなら簡単に見つけて、定期的な捕食を完璧にこなしそうだけどさ。ただしたくさん捕食しても、オーバーしてる場合は躰からすり抜けるぞ」  淡々と説明される言葉に相槌を打ちながら、懐かしげに瞳を細めた。 「こうして、丁寧にレクチャーを受けていると思い出します。はじめて先輩に出逢った日のことを」 「俺にとっては、昨日みたいなものさ」  黒ずくめの男の言葉に、ベニーは優しく囁きかける。 「多少の苦労は伴いますが、必ずやローランド様の生まれ変わりと、生涯を共にすることを誓います」 「まったく……。その生まれ変わりが、どこの次元に飛ばされるか、全然わからないっていうのに。俺らも、あとを追っかけるって言うんだろ。というかそもそも、生まれ変わることすらわかってないのによ」  まったく見えない未来に嫌気がさしたのか、うだうだ文句を言い続けた。 「きっと生まれ変わります。僕よりもローランド様のほうが、想いの熱量があるのですから。もう一度やり直したいという気持ちに変換されて、どこかで産声をあげるはず」 「見つけたら、絶対に堕とすんだな?」 「堕ちるのは必然です。僕は迷わない!」 「その言葉、忘れるんじゃないぞ! ベニーちゃんに俺の人生を預けたっ!」  賑やかな様子のふたりを乗せた車は、主のいない屋敷へと向かって進む。先の決まっていない未来へと、迷うことなく突き進むように。

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