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その後
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「最近、なんだか総吾さんの雰囲気がゆったりしている気がする……前みたいにピリピリしてないっていうか、なんか落ち着いてるっていうか……」
昼下がりの屋上で、総吾は閏の膝を枕にして天を仰ぐ。この光景が最近、もっぱらの日課になっていた。
うんと高い空の上を飛んでいく飛行機の後を追いかけて白い線がなぞる。心地好い秋の風が総吾の頬を撫でた。
「鬼の暴走がないんだ。憶測だが孤独への恐れが原因だったのかもしれない……」
もしかすると総吾の孤独に怯える心が鬼を強力にさせていたかもしれない。閏が自分を受け入れてくれたことで力が安定したのか、今では鬼の存在を畏怖することもなくなった。
「じゃあ、これからは僕が総吾さんを一人にしないから鬼は暴れないね」
彼はにっこり微笑んだ。
茶色い澄んだ眼が総吾を写し出す。最近、総吾は何もかもを包み込むような、淀みないあたたかなこの笑顔に嵌っている。
彼に心さえも囚われるのは時間の問題だ。
薄い唇が弧を描く。総吾は彼を引き寄せると、魅惑的な赤い唇を塞いだ。
―END―
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