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風俗店とかスナックがたくさんある駅外れの暗い通りが通学路だった。 別にここを通らなくてもいい。でも、ここを通るのが最も家に近い。そんな理由で通ってただけで、店の中でなにが起こってるとか、考える必要もなかった。 ただ、中で行われているようなことを、悪いことだとは思っていない。 さみしい家庭に育った。 金を持って帰るだけの父親は、団欒というものを全くしようとはしなかったし、母親はずっと昔から育児を放棄して、ネットチャットで知り合った人と出かけたままずっと家を空けている。会話する機会の多かった年の離れた姉は、結婚して、もう家にいない。 両親は、僕が深夜に帰ってきても、学校に行かなくても、なにも言わなかった。 勉強も、ろくにやったことがなかった。低い点数で叱られることもなく、成績に興味すら示さない。 家族とは、血だけがただ繋がってるだけの人間のように思える。 春だった。 高校2年生になったばかりで、授業も始まっておらず、ぬるい風がゆっくり吹いてる日だった。 僕が学校帰りにあの通りを歩いていた時、数人の男に絡まれて、殴られて、蹴られて、財布と携帯電話を取り上げられた。 僕は無理やり裏地の奥の寂れた建物に入れられ服を脱がされ、さらに暴力を受けた。 それは、強姦とか、レイプとか、そういうものだった。 ぐちゅぐちゅ音を立てながら、男のものが僕に入る。いたくて、ちぎれそうで、叫びたかったけど、口にはガムテープが貼られていた。 男たちは笑いながら僕を踏みつけたり、殴ったりした。その間も、僕の体には空き缶が入っていた。 ある太った男のものは、相当太くて、僕の顔にパチパチとそれを叩きつけたとき、むわっとした嫌な臭いがあった。 それをずん、とねじ入れられた時は、声も出ないほどの激痛で、涙が薄く浮かんだ。 穴は裂けて、血も出ていた。 「お前、かわいいな」 と男は僕に顔を近づけて笑う。 どうしたらいいかわからなくて、頷いたら、調子に乗るなと、張り飛ばされた。 ひととおり蹴られ続けた後、暴力は、終わったみたいだった。 片付けろ、綺麗にしろ、お前の汚ねえ血も拭き取れ。 まだ痛みが取れない時に命令された。僕は手のひらで、床に飛び散っていた精液などをかき集める。 そんなんで綺麗になるか。 また蹴飛ばされて、その拍子に背中を壁に打ちつけたら、笑われた。 これを使えと乱暴に投げられたのは、僕の制服だった。 母親の姉が、つまり僕の叔母が僕に買ってくれたもので、まだきれいで、新しかった。 叔母は、母が家庭の面倒の一切を放棄したことを、僕に何度も謝った。時々僕の家の様子を見にきて、母を説得しようとしている。 今のところ、母の気持ちが変わりそうにはなかった。 僕は叔母の顔を思い浮かべないようにして、制服で床を拭う。 拭きあげた時、携帯電話を返された。 「お前の写真撮ったから、余計なことしたら拡散するぞ、また遊ぼうな」 僕は頷く。 床に放り投げられていた服を着て、ふらふらしながら建物を出た。 びちょびちょになった学生服は着るわけにはいかなくて、手に持つしかなかった。

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