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第1話

なんでラーメンなの? せっかく頑張って姉貴にコーディネートして貰ったのに チョコだって、用意したし… 映画までは良かったんだ。 「…何、ラーメンダメだった?」 「あっ、、そんな事ない、ないよ」 お昼過ぎに、ターミナル駅前で待ち合わせして、そのままシネコンに入って、 チョイスされた映画は 見たかったほどほどにスリラーが入ったアクションもの。 映画の好みはおんなじ感じで、そこまでは楽しかった、楽しかったんだ。 「なんか、腹減らない?夕飯には早いけど、映画の後って腹減るんだよな」 という彼に、少し期待してた気持ちが、沈んでくる… 今日はヴァレンタイン、今日会うってことは、わかってるでしょ?デートだよね。 映画は僕のお勧めだったけど、その後は考えておくって言ってくれたよね… なんとなく友だち以上の気持ちに気がついてくれてたと思っていたのに、これじゃ、チョコだって渡せないかもしれない。 気持ちがドンドン沈んできて、ドンドン遅れがちになる。 少し先を歩いていた彼が、さしかかった交差点で急に振り返って、 「俺、預けてるものがそこの店にあるから、待ってて、取ってくるから」 って、 横断歩道渡った先の 女子向け@可愛い物系のお店に入っていってしまった。 なんなの、なんなの 預けてあるもの、誰かに渡すもの? ドンドン沈んでいく心に やるせなさでいっぱい。 ショルダーの中のチョコの箱をギュッと握って震える指先を何とか誤魔化した。 信号を2つ待って、戻ってきた彼の手には、少し大きめのパッケージ、勿論ハートのデザインが可愛い袋… もう、涙を止めるので精一杯の僕は 目を何度もシバシバさせるしか出来ることがなかったんだ。 そんな僕に気もつかないのか、ドンドン先を行ってしまう彼の後を何とかついていく僕。 少し先で待っている彼の手が僕に向かっておいでと振られている。 何となく、わざとゆっくり近寄る僕に、立ち止まったビルの中を指差して 「ここ、ここなんだ。入ろう」 そこは完膚なきまでにラーメン屋 らっしゃい‼︎という威勢の良い掛け声で、店に入ると、直ぐ奥のカウンタ〜に進んでいく彼。 カウンターでラーメン、普通のダチなんだ… がっかりも頂点の僕に 「…何、ラーメンダメだった?」 「あっ、、そんな事ない、ないよ」 「…座って、ここ、餃子も上手いんだよね、食べるだろ?」 壁に貼られたお勧めらしき品書きで、 僕の分まで注文する彼… (一応は好き嫌いは聞いてくれたけど) さっき取ってきた預かり物らしき袋を、丁寧に後ろの荷物カゴに入れて、コートを被せて、 大切な物なんだな、誰かにあげるものなんかな と、また一気に想像は真っ暗へ 黙ってしまう僕に、カウンターの奥を伺いながら、ラーメンのうんちくなんかを僕に話してくる。 そうしてる間に、餃子とラーメンが同時にやってきた。 「お。一個おまけしてくれてんだ、」 どうやら5個の餃子も が6個付いてきたらしい。 「良く来るお店なの?」 さすがに好奇心があって聞いてみると、「え?あ?言ってなかった? この店、おれんちだもの」 「え?え⁈え!」 驚いて掴みかけてた麺を膝に落としちゃった僕 「う。、、!アッツ」 慌てて水で冷やしたおしぼりを僕の太ももにかけて冷やしてくれる彼 「ごめん、言ってなかったら驚いたよな、割と俺の家がラーメン屋って言うの有名かと思ってたけど、お前は知らなかったのか」 ちょっぴりの太ももの熱と、一丁裏のズボンを汚した哀しみと、ラーメン屋さんが家だという事で連れてきてくれたの⁈という喜びで、何が何だかの僕は ウンウンと頷くばかり。 「夕方はオヤジは休んでて、兄貴が主にやってるんだよ」 「お兄さん…」 「そうそう、さっきの1個多い餃子は多分兄貴から」 と嬉しそうに笑う彼、僕はもう何だかすっかり満足になってしまって、ラーメンも餃子も百倍美味しく感じられて、全て完食。 その後はシミのついてしまったズボンを一応軽く洗うからと、彼の家に連れていかれ、家族、お父さんお母さん兄貴、姉貴、全員夜の時間は店に出てるからと、静かな居間で彼と並んで、お茶してる。 やっぱりチョコ、あげられるかな? 貰って貰えなかったらどうしよう…なんてグズるから、すっかりさっきから出しそびれてる。 そんな僕を彼はジーとさっきから楽しそうに眺めてる。 何か言ってよ…言ってくれたら、話繋げて、えいって渡せるのに…

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