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第3話 え!?いいんですか?

「お隣いいですか?」  また……か!? え、美女がいる。美女がいらっしゃる。こ・れ・は! 「おい、お前俺が先に誘ったんだ。どっかいけよ!」  三枚目な男が吠える。  そんなことはつゆ知らず、席に着く品のいい……ん? 男? 「嫌がっているようにみえましたけど?」  その人は、女と見間違える程の美人さん。ただ残念なのは、声がセクシーな男声ってところ。俺は思わずドキン。失恋したってのに、なんだろ? 髪は長く一本に結い、ダークブラックのスキニーのパンツにホワイトのロングカーディガンを纏っていた。よく似合ってはいるけどこの店にいるってことは……。 「なんだと、お前ちょっと顔がいいからっていい気になりやがって」  まるで悪役だな。苦笑。 「バーボンお願いします」 「無視すんなよ! たくっ! なんなんだよ!」  悪態を吐く男は二枚目の男の人には叶うわけない。俺は思わず美青年を見つめてしまった。じーっと。その目線にニコリと笑い、 『なんですか?』と答える紳士な女のような男。視線がかち合って思わず見とれてしまった。左目の下の泣きぼくろがなんとも色っぽい。 「鈴ちゃん、いい加減なさい。この間の可愛い男の子はどうしたの? あんなにラブラブそうだったじゃない。この子は歩大、ノーマルなの。私の弟なのよ。だから、口説くのは勘弁してあげて頂戴ね?」 「やだ! 気に入ったから俺の伴侶にする」  伴侶? 悪役の間違いじゃなくて? 「え……」 「しつこい男は嫌われますよ。歩大君嫌がってるのわからないのですかね?」 「んだよ。てめぇに言われたくくねーんだよ。このもやし野郎」  聞かないフリしてる。流石美貌の君。大人だなぁ。俺もこんな洒落た大人だったらミサちゃんに振られなかったのかもしれない。落ち込む。 「鈴。いい加減になさい。出禁にするわよ?」  ひゅ~冴えてる咲お姉さん。  男は青ざめて悪態を吐いて、どこかへ消えた。こう言い残して。 「俺、気に入ったから、友達でもいいから『鈴』って名前おぼえておけよ。歩大」  勝手に名前を呼びつけにしてやがる。でもそんなのどうでもいいや。  隣で静かに飲んでるお兄さんはこちらを向いて、そっとハンカチで俺の涙をぬぐってくれた。 「あ……ありが……とうございます」 「私でよかったら悩みとか愚痴、聞きますよ。話してみてください」  そっから俺は火がついたかのように泣いて涙ながらにあったことを話していた。  聞き上手の話上手で、すらすらと出来事を語ることができた。お兄さんは言葉を巧みに使って俺を宥めすかしてくれる。不思議だ。今はミサちゃんのこと、ちょっと辛行かな? で済んでる。  そんな訳で涙が枯れた頃、気分が少し上向きなった輝空する。と、スマホの着信。淡い期待で『ミサちゃん』からかもって思ったら、しょうもない宣伝だった。期待させやかって! こんちくしょう。  ちょ、あれ!?って時間をみたら終電逃しいるではないか。やばい。。 「咲お姉さん、終電逃したぁ~泊めて!」 「だ~め。今日はお店をはねたら、いい人が来ちゃったりしちゃうの~。ぅあ^嬉しいったらありゃしない。ということでお邪魔虫はいらなくってよ?」 『そんなぁ~殺生なぁ』などといってもいい人が来る日は絶対譲らない咲お姉さん。 「うちにきますか? ここから歩いて帰れる場所に家があるので」 「えー いいんですか!?」  漫喫で寝るのは嫌だから、何より美貌のお兄さんに少しだけ興味があったから。

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