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第1話

好きだからこそ、全てを受け入れたいとは思う。 が、この状況はさすがに酷だ。 僕、柏木明(かしわぎあきら)は、四宮舜(しのみやしゅん)に迫られていた。 「ちょっと待って。まだ、他の人いるよね?」 「いるよ?」 それがどうした?という感じで返してくる。 後ずさると服が入っている袋がガサガサと音を立てた。 背にハンガーに掛けられた大量の服が当たった。 もう後ろには下がれない。 今日は舜が勤めているショップで服を選んでもらっていた。 休みを一緒に過ごすはずだった土曜日に仕事の交代を頼まれた舜がどうしても来てほしいってことで、訪ねてきた。 明日が休みになったから、明日は一緒に過ごせる。 で、今。 舜から、休憩に行くから一緒にって言われて来たけど、ここは休憩室ではないことは明かだ。 「だから、今、キスしたいの♪」 「えっ?だってここ、他の人も在庫の服、取りに来るんだよね?」 「うん。だから、早くしよぉ。」 舜の手が僕の肩を掴むと、いつもの激しいキスが始まった。 後頭部をぐっと捕まれて、もうどうにも動けない。 卑猥な音が倉庫内に響く。 「っんぅっ。」 舜の舌が僕の中でうねうねと動き回って、思考がどんどん停止してくる。 やばい、こんなに激しくされたら、勃ってきちゃう。 足音が近づいてくる。 「んんっ!!」 必死で舜の胸を押すが、全然離れてくれない。 この細い体のどこにそんな力があるのか。 僕の心臓はばくばくと激しく動いている。 扉の開く音。 舜の動きは止まらない。 「四宮さん、そこのいるんで退いてもらえます?」 舜は唇を離すと、唾液を舌で舐めとり、笑顔で振り返る。 「ごめん♪退くよ。」 肩を抱き寄せられて、僕は恥ずかしくて舜の肩に顔を埋める。 服を手に取る音がしばらくすると出口に向かって行った。 「すみませんでした。お楽しみ中の所を邪魔しまして。」 「別に構わないよ。もう少し休憩したら戻るから、よろしく。」 扉が閉まる音がすると、僕の膝は力を無くしていった。 冷たい床にお尻がつくと、舜がきつく抱き締めて、耳元で囁いた。 「あいつには気を付けて。」 「えっ?」 いつもとは違う舜の焦りのにじむ声に胸が跳ねる。 「今の人って?」 舜は僕の質問には答えないまま、にっこり笑うとハンカチで僕の汚れた口許をふいてくれた。 「明、興奮しちゃった?」 くすりと笑う小悪魔な顔。 今の行為を思い出して、顔が熱くなる。 「興奮なんかしてない!…どんな顔して戻ればいいんだよぉ。」 「恋人とイチャイチャして、何が悪い!って顔で戻ればいいよ♪」 脇に腕をいれて立ち上げてもらう。 「そ、そんな顔できるわけないだろ。」 くすくす笑うと軽くキスをされた。 「明ってほんとかわいいね♪じゃあ、仕事に戻るから、これ持って先に帰ってて?夜ご飯は牛丼がいいな♪」 さっき舜に選んで買ってもらったショッピングバッグを渡される。 「うん。わかった。」 僕はすっかり舜の虜になっている。 付き合い始めてもうすぐ1年になる。 出逢いからすると一晩でも終わりそうな関係が、こんなに嵌まってしまうなんて想像していなかった。 僕は舜のお店を出るとデパート内をしばらくぶらぶらしてから、舜の家に向かった。

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