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第1―1話

それはバレンタインデーから数日後。 爽やかな土曜日。 冬の日差しを浴びて暖房の効いた室内は、パンツ一丁でも暖かい。 それでも桐嶋は隣りの素肌を抱きしめてしまう。 隆史… あいつもパジャマ着てないなんて… 昨夜、そんなに激しかったっけ… 桐嶋がむふふと昨夜の情事を思い出そうとすると、頭がズキッと痛んだ。 思わず目を開ける。 するとそこには横澤の二倍はありそうな丸太のような腕。 厚化粧が崩れてドロドロになった顔に無精髭。 そして蛍光ピンクのキャミソールを着た『お姉さん』が寝ていたのだった。 それはバレンタインデーから数日後。 爽やかな土曜日。 冬の日差しを浴びて暖房の効いた室内は、パンツ一丁でも暖かい。 それでも高野は隣りの素肌を抱きしめてしまう。 律… あいつもパジャマ着てないなんて… 昨夜、そんなに激しかったっけ… ま、俺達は裸で寝ちゃうのは珍しいことじゃないし… 高野がむふふと昨夜の情事を思い出そうとすると、頭がズキッと痛んだ。 思わず目を開ける。 するとそこは明らかに小野寺より逞しい腕。 厚化粧が崩れてドロドロになった顔に無精髭。 そして蛍光パープルのキャミソールを着た『お姉さん』が寝ていたのだった。 それはバレンタインデーから数日後。 爽やかな土曜日。 冬の日差しを浴びて暖房の効いた室内は、パンツ一丁でも暖かい。 それでも羽鳥は隣りの素肌を抱きしめてしまう。 吉野… 俺もあいつもパジャマを着てないなんて… おかしいな いつも俺がきちんと後始末をしてやるのに 昨夜、そんなに激しかったっけ… 羽鳥が少しの疑問を感じながらも、むふふと昨夜の情事を思い出そうとすると、頭がズキッと痛んだ。 思わず目を開ける。 するとそこには羽鳥よりは細いが、吉野の二倍はありそうな腕。 厚化粧が崩れてドロドロになった顔に無精髭。 そして蛍光ブルーのキャミソールを着た『お姉さん』が寝ていたのだった。 それはバレンタインデーから数日後。 爽やかな土曜日。 冬の日差しを浴びて暖房の効いた室内は、パンツ一丁でも暖かい。 それでも雪名は隣りの素肌を抱きしめてしまう。 木佐さん… 木佐さんもパジャマ着てないなんて… 昨夜、そんなに激しかったっけ… 雪名がむふふと昨夜の情事を思い出そうとすると、頭がズキッと痛んだ。 思わず目を開ける。 するとそこには雪名よりは細いが、木佐の二倍はありそうな腕。 厚化粧が崩れてドロドロになった顔に無精髭。 そして蛍光イエローのキャミソールを着た『お姉さん』が寝ていたのだった。 「ぎゃああああ!!」 桐嶋と高野と羽鳥と雪名が一斉に叫び声を上げて飛び起きる。 桐嶋はダブルベッドの上から、床に敷かれた布団に座る高野と目が合う。 「高野…」 「桐嶋さん…これは一体…」 その頃、別の和室でも同じような光景が繰り広げられていた。 「雪名くん…」 「羽鳥さん…これは一体…」 「と、とりあえず、この部屋を出てみるか」 「そ、そうですね…」 羽鳥と雪名が布団から出ると、羽鳥が昨夜着ていたスーツが、綺麗にハンガーに掛かってあった。 その下にはインナーも靴下もきちんと畳んで置かれてある。 雪名の洋服も同じだった。 羽鳥のインナーや靴下が畳まれた隣りに、綺麗に畳まれて置かれてある。 不思議に思いながらも、羽鳥も雪名も服を着る。 全てを身に付けると二組の布団を振り返る。 それぞれの布団で『お姉さん』達はぐーかぐーかと豪快にいびきをかいている。 羽鳥と雪名は目と目で頷くと、そーっと和室の襖を開け、外に出る。 外は廊下で、少し歩くとリビングらしき場所に出た。 そこにはどでかい真っ黒なソファ一式と、豹柄でフカフカの毛足の長いカーペット、細かな硝子細工の施されたローテーブルがある。 とにかくド派手だ。 羽鳥と雪名が呆然としていると、 「羽鳥!雪名くん!」 と桐嶋の声がした。 羽鳥と雪名が素早く振り返ると、きちんと洋服を着た桐嶋と高野がいた。 「桐嶋さん!高野さん!」 思わず四人で出会えたことに喜びあっていると、ドスの効いたガラガラ声がした。 「禅ちゃん、うるさいわよ!! これだからサラリーマンは嫌なのよ! 何だかんだしたって朝が早いんだから!」 そこには。 蛍光ピンクのキャミソールを着た、黒い短髪に厚化粧が崩れてドロドロになって無精髭を生やし、お相撲さんのような…と言っては失礼だが、どっしりとした180はある『お姉さん』が仁王立ちになっていた。 「う、うるさくして、す…すみません…。 それであなた様はどちら様で…? そしてここは何処ですか?」 『禅ちゃん』と呼ばれた手前、桐嶋が四人を代表しておずおずと訊く。 いつもの大人の余裕で男前オーラを振りまいている桐嶋はどこにもいない。 すると『お姉さん』は「あっ!」と言うと、桐嶋と高野が出て来た寝室らしき部屋に戻って、直ぐにリビングに帰って来た。 そこには。 着物でも着る時のような和風の髪型のカツラを被った『お姉さん』が出現した。 桐嶋は目を見開くと 「あーーー!! 翔子ママ!!」 と叫ぶ。 『翔子ママ』と呼ばれた、頭は和風のカツラ、服は蛍光ピンクのキャミソールというチグハグ過ぎる『お姉さん』は「だから、うるさいって!」と桐嶋を一喝すると、「おはよう、禅ちゃん」とウィンクした。

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