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第1話

ここ、高級SMクラブ『Foli Douce(フォリデュース)』は身分や素性を徹底的に調べられ、オーナーであるKINGの了承を得たものしか入れないアンダーグラウンドなクラブだ。 時々KINGの主催する公開SMショーや、サディストによるマゾヒストの品評会などが開催されるが、やって来るのは政界を牛耳る人物や、資産家、アスリート選手、芸能人などの大物ばかり。 そんな著名人や有名人たちはこぞってここへ通い、自分の隠し持った性癖を存分に発散させている。 その大物たちを全てを支配しているのはオーナーである神谷瑞希(かみやみずき)だ。 瑞希はクラブ内ではKINGとして絶対的支配者として君臨している。 クラブでプレイしている間はどんなサディストであろうと瑞希に逆らう事は許されない。 もし、少しでも瑞希の意に反した事をすれば強制的に退会させられ二度とクラブに入る事は許されないのだ。 9月も半ばを過ぎた頃、瑞希はイベントの準備に追われていた。 世間に便乗したハロウィンイベントパーティーだ。 しかし、SMクラブのパーティーは当然普通のパーティーではない。 瑞希が企画しているのは普段クラブ中の限られた空間でプレイしているサディストとマゾヒストが、一年に一度、その調教の進みぐあいや様子を大勢のクラブ会員の前で披露する、所謂マゾヒスト品評会というものだった。 何十人といるリストと履歴を照らし合わせている中、瑞希はある人物の書類に目を止めた。 新城一昂(しんじょういちたか)。 職業作家。 トップクラスの小説家で、映像化された彼の作品は国内だけでなく海外でも評価されている。 しかしそれはあくまで表の顔であり、プロの調教師として裏の顔もある。 新城はクラブ一のサディストとしてマゾヒストから絶大な支持を得ている。 通称Mr.J。 巧みな淫戯と言葉攻めでマゾヒストをギリギリまで追い詰め、初心者相手でも一切手を抜かず、容赦のない調教手段で屈服させる彼はSM界ではちょっとした有名人だ。 その男に一度でも調教されると最期。 心酔してしまうマゾヒストも後を断たない。 専属のパートナーになってほしいという要求をはじめ、御法度であるプライベートの情報まで要求してくる人間もいる。 それだけ新城一昂という男のポテンシャルが高いという事だ。 瑞希は端正な顔を歪めると、書類を無造作にデスクに放り投げた。 不愉快極まりないのだがこの男、新城一昂に瑞希は弱味を握られている。

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