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第1話

 ずっと仲良くしていけると思っていた。  小学生の頃から変わらずに四人でつるんでいけるのだと。  何かが変わったのはいつからだろう。誰からだろう。  それはいつから始まっていたのか。  分かることは一つだけ。  変わらないものなど無いのだということ。  歩の人生はとても平凡だった。  ごく一般的な家庭に産まれ、サラリーマンの父親と、パート勤めの母親、三歳年下の妹の四人家族。仲は悪くもなく、たまに兄妹喧嘩はするものの平穏な家庭だった。  小学生に上がり、歩には三人の男友達が出来た。  三人とも平凡な歩とは全く異なる性格で、その頃から何かと目立つ存在だった。  目立つからと言ってそれを自慢する訳でも、鼻にかける訳でもなく、いつも優しく接してくれていた。だから歩も平凡である事を卑下すること無く三人と仲良くしていられた。  中学、高校と四人は同じ学校に通った。  四人の中で一番、成績が優秀で品行方正な幸雄はもっと上の高校へ行くと思っていた歩はまた四人で高校生活を過ごせる事が嬉しくて仕方なかった。  真面目であまり融通のきかない幸雄だけれど、間違った事は言わないし悩みを抱えていると必ず適切な助言をくれた。  大学はかなり難関な所を受験してきっちりと受かっていた。進路が別々になるのはそれが初めてで寂しい気もしたが、大学が違っても四人はよく集まって遊んでいたからいつの間にか寂しさも消えていた。  今では幸雄は大手企業に就職して四人の中で一番将来有望だ。  高校生になってから、綺麗な顔立ちで何処にいてもすぐに分かるモテオーラを出していた千花がモデルの仕事を始めた。ビシッと整えられたヘアメイクと、スラリと長い手足にピッタリな服を纏って雑誌に載っている千花は別世界の人間の様だった。  けれど歩の前でキラキラと笑顔を見せる千花は小さい頃から何も変わらない。歩の地味な服装や髪型を弄るのが昔から好きな千花は、それからも変わらずに歩に服を選んでくれた。  そんな千花も撮られる側から、モデルを綺麗にするメイクアップアーティストを志し今も勉強中だ。  亮は小さなレストランの経営者をしている。子供の頃から料理好きでそれを仕事にしたいとずっと言い続けて、実現させた努力家だ。  いつもお弁当を作って来てくれて、高校の三年間の昼食は亮の手作り弁当ばかり食べていた。亮より美味しい食事を作る人には会ったことがないと言うくらい、彼の料理は歩の舌に合った。  少し口が悪くて、料理を褒めても素直に喜ばないけれど顔を見れば照れているのだとすぐに分かる。  そんな性格も進んだ道も全く違う三人とは社会人になってからはなかなか会う機会がなかった。いつも誰かが仕事で来れなかったりで四人揃う事は少なくなっていた。

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