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第4話

「しゃ、喋りましたねミイラ男さん」 ブンブンとミイラ男は首を横に振るが、佐々木は聞いてしまった。 ミイラ男の声は、どこかで聞いたことのある声だった。優しい低音で、ずっと聞いていたいぐらい落ち着く声。 ミイラ男の声を聞いてそう感じた佐々木は、さっと顔を青くした。 ミイラ男の声と同じように感じた声の持ち主を思い出したからだ。 嘘だ。違う。 佐々木は、自分の中で生まれた疑念を消すために首を横に振ったが消えない。むしろ、その持ち主しか頭に浮かばない。 よくよく見れば、その声の持ち主とミイラ男の体型はよく似ている。似ているというより、むしろその持ち主本人だ。 「ま、まさかとは思うんですけど、ミイラ男さん」 「…………………」 「まさか、その、木崎くんじゃないですよね?違いますよね、違うと言って!!!」 最後の佐々木の叫びは、ほぼ願いに近かった。何せ、もしミイラ男=木崎だったら本人にたいしていろいろと話していたことになるのだ。 それだけは避けたい。もし、もし本人に聞かせていたとなると羞恥心で死ねるぐらい恥ずかしいのだ。 しかし、ミイラ男は佐々木の言葉に気まずそうに視線をそらすだけだった。その反応でもう、「俺は木崎です!」と言っているようなものだ。 一気に佐々木の中で羞恥心が爆発して、急いでミイラ男の前から消えようとした。しかし、ミイラ男がそれを許さない。 「ちょっ!ミイラ男さん、いや、木崎くん離して!逃げさせて!」 「――――――――いやだ」 ミイラ男が、するするっと自分の顔を覆っている包帯を取っていく。そこから現れたのは、まぐれもなく木崎の顔だった。 木崎の方も顔を真っ赤にして、そして少し泣きそうにも見えた。いつもかっこよくて自信たっぷり感のある木崎からは考えられない表情である。 そんな木崎の表情を見たからか、佐々木の方は逆に冷静になってきた。 「その、分かってくれよ、ささき、」 「木崎く、」 「佐々木の気持ち知ってて俺、ずっと佐々木に会いに来てたの。ミイラ男でだけど。だからその、」 「からかいのために?」 「違う!!!」 一瞬、木崎がハロウィンの夜にミイラ男の姿で会いに来ていたのはからかいのためだと思ってしまった。だって、木崎には首藤という幼馴染みがいるのだ。 平凡な自分は、からかいだと思うだろう。 しかし、木崎は佐々木の言葉をすぐに否定した。 「違う!!からかいで、会いに行ったりするわけないだろ!!だからその、だからっ」 すきなんだ。 木崎の瞳からホロホロと涙が零れ落ちる。その涙がまるで、キレイな宝石のようで。 佐々木はそっと、木崎の涙を指先ですくって舐めた。 END

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