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第1話
ガサッガサササ
「此処なら大丈夫だよ。」
と おとなしそうな青年が小さな少年に話しか
ける。
「義兄様(にいさま)は一緒に行かないの?」
小さな少年は義兄様と呼ぶ青年に問う。
「僕は向こうの世界に逃げちゃだめなんだ。」
と 悲しそうな顔をする青年。
「嫌だ!!僕、義兄様と一緒がいい!!」
泣きながら懇願する小さな少年。
「ごめんね。ほら、お行き。」
と 青年は境界線である鉄格子の柵を小さな少
年にまたがせ、向こうの地面に足をつかせる。
「義兄様!!嫌だ!!やだ!やだ!」
「いつか、お前を迎えに行くから。」
「 深雪 」
~此処は東江戸で1番の吉原「彼岸花」
『寄ってらっしゃい、観てらっしゃい。』
『ねぇ、あたしを買ってみない?』
オメガの男、女が身体を売る。
『俺、1度で良いから 美雪太夫を抱きてえな
ぁ。』
と 一人の若者が連れの者に話しかける。
『お前なんか相手にもされねぇよ。』
笑いながら、下で花魁を買っていく。
僕は、上から客たちを見下ろす。
「失礼します。姐さん、お時間でありんす。」
一人の男の子が部屋に入る。
「あぁ、もうそんな時間なんだ…。わかっ
た。」
重い打ち掛けを羽織り、下に降りていく。
「あ!姐さん。おはよう。」
「おはよう。華。」
華 と呼ぶ女の人は僕の“いもうと”である。
「ちょっと、華。軽すぎ。」
華と喋るのは、風(ふう)である。
この二人は僕の次に綺麗と言われる有名な花魁
だ。
「風、今日はどんな客が来るのかなぁ。」
「さぁ。いつも親方が決めてるから、わかんな
いよ。」
「二人とも、気にしなくても、大抵いい人があ
たるでしょ?」
「まぁ、私らは親方にとって大事な商品ですか
らねぇ。」
「おう、お前たち。あと、2時間後に客が来る
から準備しとけよ。」
と まだ若い親方が3人に声をかける。
「はーい、親方。」
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