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ある日の放課後

さてこの少年、侑。一見飄々としているものの実は今非常に急いでいた。 しかしそんな時に限って何かしらあるもの。例に漏れず友人たちに捕まった彼は律儀に応対した。「追いついたぁ!」と飛び付いてきた一人を抱き止める。 「何やってんのお前ら…。つかさ、今から俺ん家でゲームすんだけど侑も来ねえ?昨日買った新作のヤツ」 「おっも、ダイエットしたまえよ」「ひで!」とケラケラ笑い合っている二人の後方から、比較的落ち着いたもう一人の友人が言ってくる。じゃれていた侑はそちらを向いた。 「まーじっすかブルジョワめ。よし明日行くから高級茶でも用意して待ってなさい」 遠回しなようで直球でお断りすると、「えー来ねえの」「つまんねー」と口々にブーイングが上がる。侑はおどけて泣き真似をした。 「うぅごめんよ皆の衆、モテるって辛いね…。行きたいのは山々なんだけどさぁ、俺ってモテるじゃないっすかぁ。だから多忙なんすよ~……ってワケでこれにて失礼!」 どこぞのチャラ男のような口調を真似して言いたいだけ言うと、ひらりと身を翻して侑は走り去った。 「デートかよ!」という、我に返った友人らのハモり声を背に受けて侑は苦笑する。 「だったら良いんだけどなー…」

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