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ある日の放課後
「カイ、頼むからこんな所で行き倒れんな泣くぞ?つか何でお前一人で帰ってんだよ。朝微熱あったろ?」
「一人じゃねえよ!」
侑の問いを鋭く遮り、カイの下から「早く退いてくれ」ともがく声がする。
謝りながらカイがフラフラと退くと、そこには更に小柄な幼い姿。つぶれた蛙の如く地面に突っ伏している。
「慶弥…えっと、無事か?なんか可哀想な事になってっけど」
どうしてこうなったのかは判らないが、侑はその少年を助け起こす。「触んなボケ」と仏頂面する彼は、泥で汚れた顔を乱暴に擦った。
棒切れのように細い体は肌が浅黒く、鋭く吊り上がった目をしている。反して髪色は明るい茶で、そのコントラストが妙に様になっていた。
彼はカイと同じ森ヶ丘小学校に通う4年生。名は境木 慶弥(ケイヤ)。
ちなみに三人は同じ名字で、侑も『兄さん』呼ばわりされているが実の兄弟ではない。
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