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ある日の放課後
「ごめんね慶弥、僕のせいで…」
カイが己より背の低い体に付いた泥を払いながら言う。訊くと、気分が悪くなって動けなくなった彼を慶弥が背負おうとした結果らしい。
そりゃそうだ、体格差というものがある。「チャレンジャーだな慶弥」と、侑はある意味称えておいた。
「うっせーよバーカ…いってえぇええ!!」
しかし照れ隠しか、憎まれ口を叩こうとした男子小学生は悲鳴を上げた。
見るとカイが笑顔で「侑兄さんに対してその口の利き方は良くないよ」と慶弥のこめかみをグリグリしている。
怖い。若干引いた侑はとりあえず止めておいた。
その瞬間。
「!」
ヒュンと風を切る音がした。何かが侑の方に飛んできてハッとする。
「侑兄さん!」「侑兄ッ」とカイと慶弥が叫んだ刹那には、侑の手には何と矢が握られていた。
矢と言っても本物の凶器ではなく、先っぽが安全仕様のオモチャである。確認した三人は脱力した。
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