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適性
「別に高校行かなくてもいいじゃん、兄貴も中卒だよ~。なんならナギ、兄貴のトコで働いてもよくない?きっと雇ってくれるよ」
祥は村内で商店を営んでいる。まさしく兄貴肌の彼は二つ返事で了承するはずだ。
祥とはまだ喋れるナギにとっては、それも良いかもしれない。彼は人混みじゃなくても数人の集団でも無理だ。件の発作を引き起こす。
人間は誰しも苦手なものがあり、ナギはその対象が人間なだけだ。それなのに簡単に世間は『適性を欠いている』『社会不適合者』と見下し切り捨てる。関わるのが面倒臭いのかもしれない。
生きていく為には、いずれ乗り越えなければいけない事だ。だけど、まだナギは十四歳。時間が掛かって当たり前だと侑は思う。ガキだ未熟だと言われても、本当にガキだし未熟なのだから仕方ない。
しかし、ナギとは保育園からの幼馴染みで村唯一の同い年だ。今まで小学校中学校と、共に成長してきた。
これは侑の我儘。分かっている。
だけど。
「…俺は、ナギと高校生になりたい」
少年の細やかな希望に、刹那目を丸くした依那は、それでも「そうだね」と微笑んだ。
「侑!あんた何してたのこんな時間まで!!」
「お…ぅ」
我が家の玄関を開けた瞬間、待ち構えていた東雲に怒鳴られた侑はつい間抜けな声を出した。
色々あって考える事もあって帰宅時間を完全に失念していた。
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