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第7話 昨夜の亜樹 ※
『意味が無さそうだな、まあ良い。ホラこれを履け』
笑みをまた一つ小さく刷いて、和真が亜樹が脱ぎ捨てていたズボンと下着を差し出した。
震える身体で起き上がり、手渡されたそれに脚を通していく。固く立ち上がったままのモノは下着の中では窮屈で、痛みさえももたらすようだった。
『かずま、これ、キツ、イ……』
『大丈夫。少しツライぐらいの方が、亜樹は気持ち良さそうだからな』
『っ、そんな、こと───』
『あるぞ』
ククッと口角を上げて笑った和真の手が、亜樹の下半身へ伸びてきた。触れるか触れないかのラインの中で、亜樹のモノを指先が煽るように辿っていく。
『思い出してみろ。窮屈な痛みも、奥の疼きも、出したくて震えているソレも……我慢して触られた時はいつもより気持ち良かっただろ』
これまでの記憶を辿った亜樹の身体が小さく跳ねて、日本人にしては色素の薄い両目に、涙が薄らと溜まっていった。
『か、ず、ま……』
ハッキリと触られているわけじゃない。それなのに行為が中断してから治まる様子がなかった熱が、よりいっそう煽られる。
和真が目を細め、そんな亜樹の髪をサラリと撫でてきた。
『大人しく待ってろよ』
亜樹の辛さも不安も分かっているはずなのに。
仕事の顔で書斎へ向かった和真が与えてくれた物は、いつまでとも分からない言葉と、額への軽いキスだけだった。
(あと、どれぐらい? イキたい、まだダメ? 今日はどれだけ我慢するの?)
漏れる吐息は熱を帯びて、時間の流れさえもどんどんと曖昧になっていく。
(出したい、奥を早く、早く突いて、早く、掻き回して……)
そんな思いだけが渦巻いて、疼きを堪えるようにソファーの上へ起こした身体を抱き締めた。
(どうしよう……俺、こんな後に、我慢なんて、できない……)
きっとこの後はひどく乱れてしまう……。
そんな予感を抱きながら、フッと机上に広げられた星占いを見つめれば、焦りに泣きたくなってくる。
「ダメ、なの、に……」
乱されて、和真に散々抱かれた翌日は、身体はいつもボロボロで、使い物に成らない事が多かった。
身体をこれまでも売ってきて、抱かれる事には慣れていても。身も心も預けきった相手からの快楽は感じ方が全然違っている。深く浚われるような快感に、限界まで張り詰める四肢の疲れは大きかった。
(ダメ、今日は……明日、お金稼がなきゃ……)
和真の誕生日は明後日だ。身体を売る時間は明日しか残されていないから。
身悶えるような疼きに身体は手酷く抱かれたいのに、それでも乱れてしまう訳にはいかなくて。反対の感情に揺れる亜樹の目から、ポロリと涙が落ちていった。
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