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第2話

カチカチとスマホのボタン操作をしながらフォルダを開く。 放課後の教室。 夕日に照らされた教室には俺しかいない。 でも一応まわりを確認してパスワードをかけた秘密フォルダを開いた。 そこに保存してあるのは写真。 たった3枚しかないけど、俺にとってすげぇ大事な写真。 被写体は3枚とも同じ。 科学教諭の――文川和己の写真。 一枚目は中庭のベンチで昼寝してるのを隠し撮りしたやつ。 二枚目はこの前あった文化祭で露店を回っている姿を隠し撮りしたやつ。 そして三枚目はたまたま夜、繁華街で見かけた文川先生を隠し撮りしたやつ。 ……隠し撮り隠し撮りって、俺って相当痛いな。 だけどしょうがない。 俺―――は文川のことが好きなんだから。 文川は俺が一年のとき新任で入ってきた先生だった。 入学式のときはビシッとスーツ着こなしてて、結構イケメンで、ちょっと悪そうな感じがいいなんて言われて女子たちの注目を集めてた。 一目惚れなんて言葉があるのは知ってるけど、そんなもんは女だけに用意された言葉だとあのときまでは思ってた。 だけど――……。 『文川和己です。俺も新任で入ってきたばかり。君たちと同じ。今日から一緒に頑張ろうな』 緩く笑ったその顔に、見惚れて――、一瞬で堕ちていた。 相手は教師で、しかも男だっていうのに。 でも当たり前に俺の想いが通じるはずもなければ、自ら言うこともできなく、二年に進級して。 文川とは接点がなくなってしまった。 担任でもなければ、受け持ちも違って。 たまに廊下であったときにあいさつする程度の、ただそれだけの生徒でしかない。 「……あーあ」 画面を閉じて、ため息。 このまま卒業までずっと想ってるだけで終わるんだと思ってた。 だけど状況は変わってしまった。 オヤジが俺に告げた一言で、全部。 『啓……。あのな実は、辞令はまだなんだが今度転勤で―――』 このまま終わるのは、文川に想いを告げられないのは嫌で。 だから俺は決めた。 告白すると。 そして今日は……タイムリミット。 今日告げないと、もう俺に時間はない。 一層強く西日が差し込む教室で、もう一度ため息をついて立ちあがった。 ぎゅ、と拳を握りしめてカバンを持って教室を出た。 ―――科学準備室に向かうために。

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