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第3話

【科学準備室】 そう書かれたドアをノックすると、気のなさそうな声が返ってくる。 相変わらずやる気なさそうな文川の声に、それだけでも頬が緩む。 ドアを開けると途端に充満した煙に出迎えられた。 文川はヘビースモーカーだ。 ほんとは校内禁煙。 文川も最初は注意されてたみたいだけど、あんまりにも吸う量がはんぱなくて、最近はあきらめられたみたいだ。 それでこの準備室だけで吸うようにと決められたって話を聞いた。 「けむ……」 思わずつぶやくと、椅子の軋む音がして文川が振り返った。 髪はちょっと跳ねてぼさってる。 そしてずっと着てる白衣に手にしてる煙草。 文川はもちろんだけど、そのひとつひとつの文川を構成するパーツにも胸が痛む。 俺ってほんと――末期だな。 「汐井か。どうした?」 咥え煙草で目を細める。 「ああ……。つか、窓開けるぞ。けむ過ぎだろ」 「さみーだろ」 砕けた口調と、だらけた空気。 それにたいしてわざとらしくため息をしてみせながら窓を開けた。 11月だから空気は冷たくて、煙を外に逃がすわかりに室内の温度が下がってく。 「おい、寒いぞ」 マジで、って言ってくるけど無視。 外の寒さに頭ん中がクリアになってく。 「俺、寒がりなんだから閉めろ」 開けたまま窓に手を置いて外を見てた俺の背後に文川が歩いてくる足音。 それに緊張して固まってると俺の肩越しに文川の手が伸びて窓を閉めた。 文川の身体が少し背中に触れてる。 だけどすぐに離れていって、寂しくなる。 やっぱり―――好きで、できるなら全部ほしい。 「で? なんか用か?」 ゆっくり振り返る。 文川は椅子に座って、吸い殻の溜まった灰皿に灰を落としていた。 「……あのさ」 心臓がすげぇ勢いで動いてる。 緊張で声が上ずりそうになるのを必死で耐えた。 「俺……」 好きだなんていったら、気い持ち悪いと思われるかもしれない。 でも、でも―――。 ゆっくりと文川の前まで近づいて止まる。 あと一メートルもない俺と文川の距離。 俺が想いを告げたらこの距離はどれだけ広がるんだろう。 そう分かってても、俺は伝えた。 「俺―――……文川のことが好き……なんだ」

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