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第4話

文川のことを見て言った。 だけど伝えた瞬間目を合わせただけで、もう視線を合わせることができない。 人生で初めての告白。 それがまさかの男相手で、しかも教師で。 羞恥に顔が赤くなるけど、それを押さえることはできなくてぼんやりと文川を見ていた。 文川はなんて言うんだろう。 俺の視界の中の文川は相変わらず煙草をふかしていて、その表情は俺の告白を聞いてもとくに動かなかった。 信じて……ないんだろうか? 「……一目惚れしたんだ、文川に」 沈黙が耐えきれなくなって、そう続けた。 少ししてため息を吐き出すようにして文川が煙をゆっくりと吐いた。 「―――汐井、お前が、俺を?」 確認するように問い返す言葉に、頷く。 ふっ、と文川が小さく笑って、そのまわりにまとわってた煙が微かに揺れ動いた。 「……本気だから……」 冗談と思われるのだけは嫌だ。 ちゃんと文川に目を合わせて、呟いた。 文川も俺を見ている。 また沈黙になって、今度それを破ったのは文川だった。 「それで?」 聞き返されて、戸惑う。 「なにが?」 「それはこっちのセリフ。好きだと告白して、それで? 付き合ってほしいとか、そういうことか?」 「え―――……あ、うん」 「本気で言ってんのか? 男同士だぞ?」 「わかってる」 「ガキじゃねーからな、清く正しい交際なんてできないぞ、俺は」 「………」 「男の俺と、お前セックスできんのか?」 薄い唇から煙草を離し、文川は嘲るように口角を上げた。 馬鹿にされた、と胸が頭がカッと熱くなる。 「……出来るにきまってんだろ」 初めて文川に会って、堕ちたあの瞬間から俺がどんだけお前のことが欲しかったか。 知りもしない癖に馬鹿にすんな。 そんな気持ちが渦巻いて、俺は文川に一歩、二歩近付くとその顎に手をかけて、キスした。 ファーストキスってわけじゃない。 中学の時に彼女もいたことあって、そのときに童貞も捨てたし。 高校に入ってからも彼女は作った。 男の文川相手に想いを告げるなんて無理だって思ってたし、気の迷いかもしれないって彼女作ってみたけど、全部無駄で。 そりゃヤることはヤってたけど、でも―――。 キスひとつで、こんなに欲情したことなんてない。 触れ合うだけのキスで、こんなにももっとなんて思ったことない。

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