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番外編第1話

「ねー、イブどうする?」 「プレゼントさ〜」 騒がしい教室。 街も学校もソワソワしているのはもうあと1週間先に控えたクリスマスのせいなのか。 クラスの女子がクリスマスの計画について喋っているのを窓際の席で聞くともなしに聞いていた。 「なぁ、お前どうすんの」 飯も食い終えた昼休み。 前の席に座っていた友人の岸田が女子たちの会話に感化されたのか話を振ってきた。 「……別に」 「別に~?」 「カノジョと一緒に過ごすんだろー?」 岸田が冷やかすようにニヤニヤと俺を見てくる。 俺は知らないふりをして顔を背けた。 "カノジョ"ではなく"彼氏"だとは岸田には言えずに、一か月前"恋人"ができたとだけ伝えてはいた。 そう―――あの一件で俺と科学教諭の文川和己は付き合うことになったわけだ。 そしてクリスマス。 一般的にはクリスマスっていえばわくわくしたりするもんなんだろうけど、男同士の俺たちが特に気にかけるはずもなく。 ましてやあの和己がクリスマスだからといってはしゃぐ姿なんて―――まったく想像できない。 だけど……。 「なぁ、岸田」 「なんだ?」 「お前、プレゼントなに貰ったら嬉しい?」 「プレゼント? そうだなー。この前出たゲームの~」 「………」 訊いてはみたものの役に立たないことははっきりわかったから途中から聞き流す。 クリスマスはクリスマスとして、別にぶっちゃけどうでもいいと言ったらどうでもいい。 ただ問題なのは、カップルたちが浮かれたつクリスマスイブの12月24日。 その日が―――文川……和己の誕生日だということだ。 「イブが誕生日なんて似合わな過ぎだろ」 ため息とともにボソッと思わず呟く。 「え? なに?」 「なんでもねーよ」 適当に返しながら、あのS教師が好みそうなプレゼントを考えてまたため息が出る。 窓の外に視線を向けると曇り空。 さて、どうしようか。 煙草1カートンとかでいいかなぁ……。 ぼんやりと昼休み中俺は頭を悩ませていた。

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