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8-旅行ないとでそれぞれ2Pえっち

「じゃーん!見て見てっ!これ見て!」 朝っぱらからうざったいテンションマックスの加賀見。 「近すぎて見えねーんだけど」 チケットらしきものを眼球ド真ん前に突き出されてしかめっ面の笠原。 「加賀見、シャツのボタンかけ違えてるよ」 パックの調整豆乳を飲みながら今日の小学生でも滅多にしないミスを教えてやる紙屋。 おしゃべりで騒がしい朝の教室。 かけ違えていたボタンをぽちぽちかけ直しつつ、机を挟んで向かい合っていた笠原と紙屋に嬉しそうに加賀見は報告する。 「ホテルの無料宿泊チケット!くじ引きで当てた!」 「へーー」 「野生の勘っていうの、持ってそうだもんね、加賀見」 「次の土日に行こー!」 「なぁ、加賀見さ。お前、このチケット何枚に見えてんだ?」 「二枚!」 ペアチケットだ。 一人、あぶれる。 「一人行けねーだろーが。お前、真性バカ?」 「ありがとう、加賀見。俺と笠原にくれるんだね、いつの間にそんな立派に、」 「違うし!俺行くし!俺のチケットだし!」 「自己中ヤローが」 「晩ごはんのバイキングつきだよー!」 「ボタンまたかけ違えてるよ、加賀見」 「もー二人ともノリ悪い!じゃあジャンケンで決める?勝った二人がチケットげっと!」 「負けてもぜってぇ文句言うなよ、加賀見」 「もちろん相談禁止ね!」 「するかよ、正々堂々勝負してやる」 「(あ……笠原にいっしょにパー出してもらおうと思ったんだけどな)」 加賀見のノリにつられて立ち上がった笠原と紙屋。 さっきよりも複雑にボタンのかけ違えたシャツ姿の加賀見が威勢よくかけ声を発する。 「最初はグー!」 「「「じゃんけんぽん!」」」 ここ十年の間に建てられた割と真新しい海辺のホテル。 窓を開ければ爽やかな潮風が訪れる、オーシャンビューと露天風呂が自慢でアクティビティやリラクゼーションなど充実している、都心から往復直行バスも出ていてアクセス便利なリゾート施設だ。 「わー!海!海だー!海ー!」 洋室を突っ切ると窓を開けて梅雨時期の暗い海を前にはしゃぐ加賀見。 「そのまま落ちていーぞ、加賀見」 いつにもましてうざテンションな加賀見に素直に舌打ちする笠原。 紙屋の姿は……ない。 ほっぽられている加賀見の荷物を足蹴にし、自分のバッグをソファに下ろした笠原はため息をつく。 そこへコンコン、ノックの音が。 まだ一人で盛り上がっている加賀見の代わりに笠原がオートロックのドアへ向かい、がちゃりと開けてやれば。 「あ、部屋、俺のトコと変わらないね」 「……俺、なんかもう疲れた、紙屋」 同じフロアの部屋を単身で予約していた紙屋に笠原は早速不満を漏らした。 つまりジャンケンで勝ったのは笠原と加賀見で。 二人で行くなんて絶対嫌だと笠原は不満爆発、すると加賀見が「じゃあ紙屋もおいでよ~紙屋の部屋代、三人で割ろ」と誘い、誘われた紙屋はそれに甘んじて。 頭文字「か」トリオは部屋は違うものの一緒に週末プチ旅行にやってきたわけである。

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