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《番外編》ギャンブルといたずら①
チロン
グラスの氷が鳴った。
ソルティドッグ、ほとんど氷が溶けてしゃぶしゃぶだ。
パーティーなのに。
楽しい顔しなくちゃいけないのに。
『妃はすぐ顔に出るな』
コツン
しゃぶしゃぶのソルティドッグのグラスを取り上げられて、わっ冷たいっ
額にグラス、当てられてしまった。
『花嫁の可愛いところとも言えるが』
「お、俺、楽しいよ!」
慌てて笑顔で取り繕ったけれど、時既に遅し。
うわー、バレバレだ。
しかも、なに?
なんでニヤニヤしてるんだ?プリンス's!
『顔赤いのは……』
『アルコールのせいか?』
うぅー、分かってるくせに。
双子プリンスは意地悪だ。
『行ってこればいいのに』
『素直じゃないところも、妃の可愛さだ』
う、う、うぅ~
縣と桐生先輩が帰ってこない。
パーティー会場でバーテンの仮装したら、大勢に取り囲まれて、そのままどっか行っちゃった。
モテるんだ、あの二人……
基本的に。
競パンはいてても、はいてなくても。
胸の奥、チクチクする。
なに、これ……
俺、もしかして妬いてるの。
俺、縣と先輩を信じてるよ。
なのに。こんな感情覚えたらダメだ。
まるで二人を疑っているみたい。
変だよ……
『ダメじゃない』
『変じゃないぞ』
なんで?
分からなくて。ハッとして見上げた月夜の空から、碧眼と蒼眼の二つの視線が降ってきた。
『分かるよ、お前にも』
『受け止められる』
なにを?
『恋は苦しいって事』
『そんな想いを抱く自分が苦しくても、自分を好きにならなくちゃな』
そうなの?
『だって俺達はお前が好き』
『妃を愛しているぞ』
『そして、あの者達もお前が好き』
『俺達の好きなお前が自分自身を嫌ったら悲しいな』
「うん……」
俺、頷く事しかできない。
人を好きになるのって、我慢する事なのかなぁ。
それとも、ぶつかっていく事なのかなぁ。
大切に思ってる。
だから難しい。
『好き』の気持ちは時に自分自身さえも飲み込んで、自分自身が分からなくなる。
『そんな時は頼ればいい』
『分からない時は分からないって、伝えろよ』
「そうなのか?」
そうだ、って。
二人が頷いた。
『頼られると嬉しくなる』
『恋人はそうやって育てていくものだ』
俺が、縣と先輩を!?
「無理無理っ」
だって。
「いつも振り回されてるの、俺だぞ!」
『だったら賭けてみるか、妃』
『負ける気がしないな、花嫁』
賭け事なんて、生まれてこの方した事ない。
どうなるっ、俺★
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