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《番外編》ギャンブルといたずら④
シェーカーの音が軽やかに響く。
「京太を放っておくなんて、ある訳ないじゃないか」
「拗ねてたのか、橋本」
「そんなんじゃないけど……」
うぅ、拗ねてました。先輩に嘘はつけない。
白状したら、ようやく解放された。
鼻をつまむ手から。
「はい、先輩」
ここからは桐生先輩の番。
縣から受け取ったシェーカーをカクテルグラスに優雅にそそぐ。
「俺達は講習を受けてたんだ」
「せっかくバーテンの仮装したんだから、カクテル作りたいなってね」
縣がにこやかに微笑んだ。
カクテルの名は『血と砂』
ちょっと怖い名前が、ハロウィンっぽい。
名前の通り、真っ赤なカクテルだ。
「甘くて飲みやすいんだぞ」
「へー」
楽しみ♪
「ありがとう、縣」
バーテンの格好似合ってるぞ。
つか、カクテル作ったんだから仮装じゃなくってバーテンだよな。
「ありがとう、桐生先輩」
先輩みたいなカッコいいバーテンさんがいたら、毎晩通っちゃうかも。
「橋本」
あれ、あれれ~?
どうして、先輩。血と砂のカクテルグラスが俺の手を擦り抜けて、先輩に取られてしまった。
「飲ませない」
なんで?
ねぇ、先輩。俺に作ってくれたんじゃないんですか。
「これは、こう使うんだ」
赤いカクテルが滴って……
「ひゃあっ」
冷たい。
首元を濡らした。
「頂きます、橋本」
「頂きます、京太」
「あぅ」
チリッ
首筋に痛みが走る。
「俺達はヴァンパイア」
「お前の真っ赤な血を頂くぞ」
チュッチュッ
チリ、チリリッ
甘い痛みが交互に襲ってくる。
「浮気するなよ、京太」
「お仕置きだ、橋本」
甘美な夜の甘い罠
俺は二人に翻弄される。
「京太、残りのカクテルは?」
「俺達のどちらの口から飲みたい?」
やっぱり二人は意地悪。
俺のHEROは、俺だけに意地悪で。これって俺の特権かな?
甘い意地悪は嬉しくない……わけではない。
カクテルと同じ色の紅葉の葉が一枚、月から降りてきた。
おかしいな。意地悪されても気持ちが溢れてくるよ。
カクテル飲んでないのに、酔ってるみたい。
月夜の晩の吸血鬼の魔力?まさかね。
紅葉の色が赤い花びらのように、空を舞う。
「京太、べしょべしょ」
「もー。お前達がしたんだろ」
「そうだっけ?」
笑いながら、桐生先輩がハンカチを出した。
「拭いてやる」
襟元から手を突っ込んで……
「あっ」
どうしましたか、先輩?
「……橋本」
「うん?」
「……ブラしてる♪」
ギャアァァァーッ♠
ちがうんだ!
これはっ、これはっ
プリンス'sに無理矢理付けられたやつー♠♠♠
………………貝殻ブラ、脱ぐのすっかり忘れてた。
キイッ
プリンス'sを睨み付けるけれど。
カリンッ
「「かんぱーい」」
なにが乾杯だッ!双子プリンスッ!
なんにも、めでたくないぞー!!
「乳首立ってるな」
「違うっ!」
先輩。それは貝殻ブラのピンクトルマリン乳首です♠
「ほんとだ♪」
ぷに
「縣ッ」
お前が潰したの、本物の!!……
「京太の乳首立ってる♥」
「言うなーッ!!」
〈fin〉
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