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第1話 出逢い ~賢一side~
「あ゛うぅ……俺しばらく、立ち直れない」
喫茶店のテーブルに突っ伏する俺に、呆れた様子で幼馴染の鎌田 正仁 、通称まさやんは言い放った。
「2度ある事は3度ある。昔の人は上手い事を言うもんだな」
その言葉に、突っ伏しながらギロリとまさやんを睨んでやる。
「実は、喜んでるだろまさやん。同棲作戦が失敗したのをさ」
「失敗は想定内だよ、けん坊くん」
腕組みしながら、得意気に言ってくれた。その様子に、ますます苛立つしかない。
「何で想定内だよ。俺、ワケわかんない」
「第3者的視覚及び話から、けん坊はどこからみても、都合のいい男にしか見えないからだ。年上男に、いいように利用されてるとしか思えん」
俺の心の傷に、ベタベタと塩を塗ったくるようなことを流れるように、平然と言ってのけた。
「叶 さんのためなら、どんなことでも尽くしたいんだよ。まさやんだって彼のためなら、何だって出来るだろ?」
「全てにおいて、アレコレしてやらん。つけ上がったら、それこそ厄介だから」
「つけ上がったっていいじゃん。そんなところさえ、可愛く見えるじゃないか!」
俺のセリフが言い終わらない内に、険しい顔したまさやんが、テーブルを手のひらでばしんと叩いた。その様子に恐怖して、突っ伏していた顔をあげるしかない。
「お前、そんなんだからナメられるんだ。これをいい機会にして別れろ。そして年下と付き合え。年下はいいぞぅ、調教しがいがあって」
まさやんの鮮やかなキレ具合――
いつも通りすぎる様子に、俺は顔を引きつらせた。さっきから、かなり爆弾発言してるの本人、分かっているのかな……
「まさやん、彼と上手くいってるんだね。良かったよ」
中学校からの長い付き合いしているので、クールダウンさせるのはお手のもの。恋愛の話をしたら、饒舌を極めている口がどこかにいっちゃうんだ。
さっきまでの怒りはどこへ。今度はまさやんが、顔を引きつらせる。ほんのり赤ら顔なのは、見なかったことにしてあげよう。
「その節は、かなりお世話になりました」
ご丁寧に、ぺこりと頭まで下げてくれた。
「まさやんが幸せなのは、俺の夢でもあるからさ。ホントに、良かったって思う」
「だけどいつも、どちらかが上手くいってる時は、片方はダメになってるのが多いよな……」
心底済まなそうな顔をして、じっと俺を見る。
「まさやんのときみたく、人様のことは上手く誘導出来るのに、自分のことになったら、どうにもままならないんだよ」
「それは、誰だってそうだろ。俺はけん坊のお陰で、何とかなったワケだし」
「俺はちょっとだけ、手助けしただけ。それにまさやんがノッてくれなかったら本当は、企画倒れだったんだから」
にっこり笑うと、まさやんが照れながら、人差し指でポリポリ頬を掻いた。
「とにかく、年上の彼を持つと大変だな」
「何てったって強者 な彼だから、かなり大変です……」
何かしようとしても全て見透かされ、突っ込まれた上に、しっかりとたしなめられる。
強者な彼、中林 叶 さんとの出会いは5年前、俺が大学3年の冬だった。
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