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第15話 きっかけ~叶side~5

***    『昨日ライブの打ち上げで飲み過ぎて、今日は二日酔いです。叶さんは、お酒呑めるほうですか? 賢一』  次の日から、こういうメールが賢一くんから、マメに送られてきていた。多い日は、朝昼晩と送ってくる。  内容は大したものでないものの、メアドを教えた手前、返信しなければならない。ゆえに、仕事の合間をぬって送信。 『お酒は、たしなむ程度に呑みます。自分の酒量を弁えず呑む人は、社会人になれません』  忙しい仕事の中で、いつの間にか賢一くんからのメールが、唯一の楽しみになっていた。さりげなく俺の情報を探ったり、思いやりの言葉等々、無理に頑張っている姿が目に浮かぶ。  そんなある日、帰宅しながらメールの返信をどうしようか考えている最中に、ふと視線を感じた。  気のせいかもと思いつつ振り返ったら、電柱の影に人の気配――  慌てて走って自宅に帰る。リビングの電気をつけずに、カーテンの隙間から外を見ると、クリスマスに交際を断ったあの男がマンション前に佇み、こちらを見上げていた。  部屋までバレているとなると、前からつけられていたのかもしれない……  史哉さんの自宅に行くときは、会社の人間に見つからないよう、細心の注意をはらっているから、多分大丈夫。だけどまさか、自宅につけてくるヤツが現れるなんて……  明日賢一くんからメールきたら、一緒に帰れるか聞いてみようと考えた。  イブに代理の恋人になってもらってるのに、一緒に帰らないのはおかしいと、ストーカーに勘ぐられたら、襲われるかもしれないから。

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