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同棲大作戦!(賢一side)3
***
今日は会長命令で、お孫さんの護衛役を仰せつかっている。
買物をするのに外出するだけなのだが、あまりの可愛らしさに、変な男が寄ってくるかもと心配した会長が、何故か俺を抜擢した。
何だかよく分からないが、目をかけてくれる理由が謎だ。会長と話をしたことすらないんだけど――
「山田くん、ごめんなさい。お仕事中なのに、おじいちゃんが我が侭を言っちゃって」
「大丈夫だよ。ちょうど煮詰まってたトコだったから、逆に助かったしさ」
彼女とは、同期で入社していた。でも部署が違うので、なかなか会う機会がなかったけれど、ふとしたことがきっかけで、話をするようになったのである←今は多くを語れない
叶さんへのアプローチじゃないが、タイミングって、大切だと思う。
「朝比奈さん、今日の買物は何の予定なの?」
「社長室に来たお客様に出すお茶菓子と、こっそりおじいちゃんの誕生日プレゼントも、一緒に買っちゃおうかなって。山田くん、趣味が良さそうだから」
にっこり微笑む彼女。
「それなら、あの人に頼めばいいのに」
俺が言うと頬をプゥと膨らませて、不満顔を露にする。
「だって、迷ってばかりで全然決めてくれないんだもん。山田くんみたいに速決してくれないから、イライラしちゃって、ケンカになっちゃった」
(どこのカップルも、受けが強い――)
「それだけ真剣に、選んでくれてたって事だよ」
「だけど今回だって山田くんと出掛けるって言っても、何も言ってくれないんだよ。若者同士、話が弾むといいね、だって」
む~、フォローしたくても上手くいかない……
「私、何で山田くんを好きにならなかったんだろう」
そう言って、寂しげな表情を浮かべながら、俺の顔を見る。
「朝比奈さんの好みの範囲に、入ってなかったからじゃないのかな」
好かれても困るけど。俺には、叶さんがいるんだから。
「ルックスでいったら、むしろ山田くんOKだよ。しかも仕事は出来るし、バンドやってて格好いいし、おじいちゃんにも好かれてる」
「朝比奈さん……」
「山田くんと付き合ったら、すっごく楽しそうだなぁ。趣味も合いそうだし。友達にも自慢出来ちゃいそう」
そう言って突然、俺の腕に自分の腕を絡める。ふくよかな胸が、左腕にあたるんですけど////
「山田くんの好みの中に、私は入らない?」
「俺の好みはツワモノな人がいいから、朝比奈さんは無理」
「何それ、変なのぉ」
コロコロと笑う彼女に、こっそりため息をついた。……微妙に疲れる。
――何だか、はじめて散歩した子犬を連れ歩いてる気分。
今度は、突然腕を引っ張られる。とあるブランドのショーウィンドー。
「見て見て、素敵!」
俺も彼女の背後からそれを拝見。うん、綺麗。
ショーウィンドーの中にあったのは、真っ白なタキシードとウェディングドレス。時期的に、ブライダルフェアをやっているようだ。
このタキシード、叶さんに着てほしいなぁ。スレンダーだから、きっと映えるだろうって考えてると、
「山田くん、彼女のことでも考えてるでしょ?」
とズバリ指摘され、うっと言葉に詰まった。
「目尻が下がって、いい男が台無しになってるよ」
「そんなことを言われても、こればっかりはしょうがないと、目をつぶって下さい」
「いいな……そんな風に、想われる彼女さん」
淋しそうにドレスを見上げる。そんな朝比奈さんの手を引いて、
「それよりも、買物早くしなきゃ。俺でよければ選んであげるよ、会長のプレゼント。だから元気だして?」
繋いだ手に、少しだけ力を込めて引っ張ると、握り潰す勢いで握り返してきた。
「山田くん、気を遣い過ぎ。しかも私に触っていいのは、あの人だけなんだからねっ」
「あはは、元気で何より」
握り潰された手をさする。女心ってわかんねー、複雑怪奇……
俺は知らなかった。
いつからか分からないがこの様子を、叶さんが通りの向こうから、ずっと見ていたことに――
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