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同棲大作戦!(賢一side)2

***  3度目のアプローチは、まさやんが片想いしていた彼に告白し、上手くいって付き合い始めたときだった。  同棲は無理でも、フィアンセ的な関係じゃ駄目かなぁと考えた俺。  思い切って指輪を購入(しっかり給料3ヶ月分だぜ)前回のように、改まった感じじゃなく、さりげなぁく話を切り出そうと試みる! 「まさやんにも、やっと恋人が出来てさ。毎日、とっても幸せそうなんだ」  お互い仕事を持ち帰っていたので、叶さんの自宅にて、テーブルに向かい合わせで座っていた。  俺の話に、不思議そうな顔をする。 「あんだけ格好いいのに、今まで恋人がいなかったのが、逆に謎だ」 「ああ見えて、まさやん照れ屋さんだから、俺がきっかけを作ってあげなかったら、ずっと片想いしていたと思うよ」  そう言うと叶さんは、かなりイヤそうな顔をした。 「人の恋路に首を突っ込むなんて、賢一は下世話な真似をするんだな。男なんだから自分の力で、何とかすればいいのに」 「世の男性全員が、押しの強い人ばかりじゃないんだよ」 「君は初めから、押しが強かったもんな。いきなりプロポーズしてきたし」  呆れた眼差しで俺を見る。    いい頃合だと思ったので、傍に置いてあった鞄から、指輪が入ってるケースを手早く取り出し、叶さんの手元に置いてあげた。 「何これ?」 「同棲……今は無理でも、これくらいは受け取ってほしくて」 「やだ!!」  あっさり拒否られた。何で!? 「もう少し、ムードのあるところで欲しかった。色気のない話の後で、何で今、渡すんだよ」  ガーン( ̄□ ̄;)!!  そして、戻される指輪…… 「人が安らかに寝てるときに、こっそり指のサイズ測ったり、今日に至っては、変に落ち着きなかったり全部バレバレ」  俺の考え、休むに似たり――  こうして3度目のアプローチ大作戦も、見事に失敗したのである。  そんなアプローチの失敗を、まさやんに延々と愚痴ってしまった。 「けん坊が白髪になるまで、同棲出来そうにないな」 「まさやんが言うとその通りになりそうで、正直怖いんだけど」  言いながら身震いしてしまう。そんな俺を見て、 「アプローチが失敗に終わったからって、他の子に手を出してないよな?」  まさやんはちょっとだけ顔色を曇らせながら、疑いの眼差しを向ける。その視線に、口を真一文字に結んだ。 「俺の会社にいる、小野寺から聞いた話なんだけど、お前の会社の会長の孫娘と、けん坊が付き合ってるって。逆玉にのるんだろうってさ」  吐き捨てるように言い終える。 「けん坊のことだから俺のときみたく、誰かの為に何か計画しているんだろ? だがな、自分を使うのはどうだろう」 「まさやん?」 「お前の彼氏が、これを知ったらどうなるかな。俺に対しても、嫉妬する男なんだぜ。かなりな潔癖症だろう」  腕組みしながら、俺の顔を見た。まさやんの視線を避けるように頬杖しながら、そっとため息をつく。 「叶さんには言えない。人の恋路に首を突っ込むなんて、下世話だって言われたし。だけど今やってる計画は、どうしても俺が絡まなきゃ駄目なんだ……」 「チームリーダー、山田 賢一の野望ってなワケか、似合わないな」 「まさやんにも、詳しく言えなくてごめん」  そう言うと、素早く席を立つ。俺を見下ろす視線が、冷たいのなんの。 「一応忠告はしたからな! 何かあっても絶対に、手は貸さないから」  その言葉が胸に突き刺さった。  だけど俺と叶さんに限って、何かあるわけないじゃないか。ふたりの絆は簡単に離れない、このときはそう思っていた。

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