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同棲大作戦!(賢一side)

 翌年、俺はとあるプロジェクトのチームリーダーとなった。  日頃の業務態度や営業成績を考慮してのさい配なれど、入社数年の社員がリーダーになるのは異例ということで注目を集めてしまった。  でも叶さんに比べると、当然まだまだな地位。自分でまだまだと思いながらも、玉砕覚悟で同棲の提案をしてみるべく、とある計画を立ててみたんだ。  初めて告白した時のプロポーズを入れると、2度目のアタックになる。  久しぶりにレストランで外食、俺の昇進のお祝い。 「賢一がこんなに早く、会社で責任重要なポストに就くなんて、正直思わなかったよ」  美味しそうに赤ワインを呑みながら、誉めてくれる叶さん。 「叶さん、話があるんだけど」 「なに? 賢一、変顔になってるぞ」  緊張のせいで強張った俺の顔を見て、声をたてて笑った。 (――よし、和やかなトコでドカンと行くぜ) 「叶さん、俺と同棲して下さいっ!」  言い放った途端に笑みは消え、困った顔になる。 「俺じゃあ、頼りないっスか?」 「ううん、そうじゃないんだ……」  困った顔を今度は真剣な顔にして、じっと俺を見つめた。 「賢一と同棲したいって考えてるけど、今は無理。時期が悪いんだ」 「時期?」 「うん、未婚の女子社員を集めたチームを作る話が出ていてさ。そのリーダーが俺」 「リーダーが叶さん?」  俺が聞くと、更に難しい顔をした。 「未だにうちの会社、男尊女卑があってさ。それを何とかしたくて、俺が中心になって、思いが同じ社員を集めて、チームを立ち上げたんだよ。女は仕事は大して出来ないだの、結婚すると子供が出来ていつ会社を辞めるか分からないとか言われてる現状をずっと見ていたんだけど、それって酷いと思わないか?」 「そうだね……」 「仕事しながら、チームの運営をしていくとなると、一緒に暮らしたら生活パターンが間違いなく、すれ違っちゃうって思うんだ」  俺は俯いてため息をつく。  叶さんにとって、会社は大事だもんね。しかも、俺との同棲を考えてるって言ってくれたし、ちょっとだけ待てばいいか―― 「叶さん、女子社員のために頑張ってね。倒れるまで頑張っちゃダメだけど」 「賢一ゴメン。有り難う……」  こうして2度目のアプローチは、失敗に終わった。

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