「ぁ、ンっ……ふっ……ぅ」 「痛く、ないか？」 　あの濡れた唇で、乳首をねっとり愛撫されるだけでイキそうだ。今すぐにでも出してしまいたいのに、大和は俺のペニスには触れてはくれない。 　コンドームを嵌めた指で、俺のナカを、ゆっくり、ゆっくりと押し開いている。 「やまと……っ……ん、んっ……ぁ」 「自分でも、したことあんの？」 「なっ……ないわアホ！！　ぁっ……あ、そこ……っ」 「ここ、イイ？」 「わか、わからへんっ……ァっ……あぁ……」 　アナニーをしたことがないわけではない。大和に告白される前から、こうされることを想像しながら指を抜き差ししたことはある。逆に、大和を抱くイメージで、オナニーに耽ったこともある。生身の大和と顔をあわせるまでは、自分がネコなのかタチなのか、はっきりと想像できない部分があった。 　でも出会ってみてすぐに、自分は大和に抱かれるのだと直感した。大和の男らしい魅力は鮮烈で、抗いようがなく自分が組み敷かれる側だとすぐに分かった。 　そこからはずっと、自慰をするときは後ろを使うようにした。でも自分の指じゃ全然イけなくて、結局、大和に掘られるところを妄想しながらペニスを扱いた。すごくもどかしかったし、こんなにも硬く感じの悪いアナルで、大和が気持ちよくなってくれるのかと不安にもなった。なのに……。 　――ふわ、あ、ああ、コレ、前立腺……？　なんこれっ……スゴい……ンっ……なんこれ、あ、あっ…… 「ここ……こうしてたら、イけそう？」 「あっ……！　もっ……いやや、そこばっか……ッ」 「そこって、どっち……？」 「んっ、んふっ……ンっ……」 　左手で俺の手を握りながら、大和はいやらしい舌遣いで俺の乳首を転がしながら、上目遣いにこっちを見た。 　キスでトロトロにされている間に全裸にされて、自分から脚を開いて、ぬちぬちとアナルを馴らされているなんて……正気の自分が今の姿を目の当たりにしたら、羞恥のあまり床の上でのたうちまわってしまうだろう。 「いやや、やまと……っ……ァ、あっ……」 「どんな感じ？　気持ちよくない……？」 「腹んなか、熱くてっ……なんか、へん……っ……ンんっ」 「え、まじで？　もうやめとくか？」 「それもいやや……！　アっ、ぅっ……」 　大和は乳首責めをやめて、心配そうに俺の顔を覗き込む。若干心細くなっていたところへ大和が身を寄せてきてくれたものだから、俺はすぐに大和の首に縋りついた。 「佐波んナカ、すげぇ、熱い」 「ふっ……ぁ」 「きつかったら、もうやめとこ？　俺は、挿れなくても平気だし」 「う、うそつけ！　……ガッチガチやんか……やまとの、コレ……」 「あー……まぁ、そりゃそうだろ」 　俺の中に指を挿れたまま、大和は俺にキスをした。大和はどことなく切なげな表情で俺を見つめながら、唇に笑みを浮かべた。 「だって、佐波がこんなエロいかっこしてさ。俺のために頑張ってくれてるんだよ？　そりゃ、勃つだろ」 「べ、べつにがんばってるわけちゃうし……」 「それにさ、さっきより……なんか、指の締め付けキツくなくなってきてる。ほら……分かる？」 「ああ、あっ……」 　ゆっくりと抽送される指の感触が、これまでとは違った何かを呼び起こす。さっきまで、挿入された指には異物感しかなく、前立腺を愛撫されることも、ただただ痺れるような刺激しか感じられなかったのに。 　ゆっくり引き抜かれ、再び中に入ってくる大和の指に、俺は確かな快感を見つけ出し始めていた。 「あ…………っ……！　ぁ、っ……」 「ほら……さっきよりスムーズだろ？」 「ん、んっ……あ、ぅ……っ」 「佐波」 　ちゅ、ちゅっと額や目元にキスをされながら、ゆるゆるとピストンされる。ぽろぽろと流れる涙を唇で受け止めてもらいながら、俺はまぶたを持ち上げて大和を見つめた。 「はァっ……なんか、なんか、さっきと違う……」 「ほんと？」 「ぁ、ァっ……なんや、ほんまにイキそ……」 　下腹の奥にわだかまる熱が、確かな快感となって俺の全身を溶かし始める。大和から与えらえるディープキスの心地よさも、アナルを擦られる快感がさらに存在感を増していく。 「あ、っ……ぁ、あっ、あ、」 「佐波、すげ……ひくひくしてきた。……なんか、もっともっとて欲しがってくれてる感じ、する」 「ぅあ、あっ……やまと、ハァっ……あ、あっ」 「やば……佐波、くっそエロい……ハァっ……かわいい。大好きだよ」 「ん、ふぅっ…………ンっ……！」 　その瞬間、俺の中で何かが弾けた。 　目がくらむほどの激しい何かが俺の全身を痺れさせ、ペニスからは白濁した精液が迸る。 　一瞬、何が何だか分からなくなり、俺は必死で大和にすがった。 「ハァッ……はぁっ……なんこれ、あぁ、っ……」 　目が眩むし、絶頂の余韻がなかなか引かない。俺は一人で汗だくになりながら、大和の肩口に顔を埋めて、荒い呼吸を鎮めようとがんばった。しっかりと抱き返してくれる大和の手のひらが頼もしく、無性に甘えたいような気持ちが湧き上がる。 「佐波……大丈夫か？」 「だ……いじょぶ。……すごい、なんこれ……ハァっ……は……」 「すげぇじゃん。いきなりナカでイケるなんてさ」 「そ……そうなんかな。もうわけわからへん……しんど……」 「……はぁ……もう、俺もやべーわ……」 「え……？」 　大和はちょっと身体を離し、眉根を寄せて苦しげに息を吐いた。涙目のまま見上げてみると、大和はちょっと困ったような笑みを浮かべて、俺の頭を撫でてくれた。 「イってるときの佐波、マジでエロすぎて……かわいくて」 「っ…………い、いい、いちいちそんなん言わんでいいねん！！」 「今だってほら、俺にしがみついて離れねーじゃん。何これ、もう……めっちゃくちゃ幸せなんですけど」 「うううっ……」 　そんなことを言われると、忘れていて羞恥心を思い出す。反射的に腕を突っ張って大和から離れようとしたけれど、指はまだ挿ったままだし大和は俺を離さないしで、まるで身動きが取れなかった。 「ちょっ……抜けよ、もうっ……！」 「あ、ああ……ちょい待ち」 　ずる……と指が引き抜かれると、一気に身体から力が抜けた。どさりとベッドに沈み込みながら、俺はゴムを外して指を拭う大和の背中をじっと見上げる。 　そしてふと、大和のジーパンを盛り上げる、勃ちっぱなしのペニスを見つけてしまい……。 　――あ……それでつらそうな顔しててんな……。楽にしてやりたいけど……ど、どないしたらええんや。ふぇ、フェラとか……そういうのして欲しいんかな……手でも、ええんやろか……。 　そんなことを迷いつつん悶々していると、大和がくるりとこっちを向いて微笑んだ。笑ってはいるけど、やっぱりすごくつらそうで、身体は重くて言うことをきかないが、なんとかしてやりたいと気持ちが逸る。俺は横向きに寝そべったまま、そっと大和の太ももに手を置いた。 「……大和も……あの……」 「え？」 「いや、あの……しんどそうやし、さ。俺……手で、抜いたろか？」 「あ……うーん」 　大和は若干ばつが悪そうに天井を仰いだあと、そっと、俺の裸の肩に触れてきた。汗で冷えてきた肌に、大和の手はあまりにも熱っぽく、情欲が滲む目つきはめちゃくちゃに色っぽい。 「……挿れないから、さ。後ろ向いて、佐波」 「えっ……！？　な、何するん！？」 「素股、してもいい？　なんか……収まんなくてさ、お前のこと、もっともっと感じたいんだ」 「あ……っ」 　大きな手が腰に触れ、そのままうつ伏せにさせられた。戸惑いつつもされるがままになっていると、いつの間にやら、俺は四つん這いで膝を閉じ、尻を突き出すような格好をさせられている。 　――うぁぁぁ……っ……なんこの格好、めっちゃ恥ずい……っ……！！ 　恐る恐る後ろを振り返ってみると、大和が膝立ちになり、俺の尻を手で支えながらジーパンを下ろしている姿が見えた。今すぐにでも俺を犯してしまいたそうな猛々しい表情に、きゅんきゅんと胸が疼いて、俺のペニスまで硬くなる。 「ごめん……ちょっと乱暴になっちゃうかもだけど、マジで挿れたりしないから」 「い、いちいちそんなん言わんでもええて。俺は、何されても、平気やし……ッあ……！」 　ぺろ……と背筋からうなじまで舐め上げられて、俺は猫のように腰をしならせ声を上げてしまった。大和は恭しい手つきで俺の背中から腰を撫で、感極まったようなため息をついている。 「バックからの眺めも最高だよ？　……佐波って、すげー腰細いんだな。……背中も綺麗で、ハァ……エロい」 「だからっ……くすぐったいねん、そんな、触り方……されたらっ……」 「くすぐったいところって、開発されると性感帯になるんだって。佐波はくすぐったがりだからさ、全身性感帯だな」 「あほか！　そんな、そんなことあるわけ……ァっ……」 　ローションでぬるぬるになった大和のペニスが、ぬるりと俺の太ももの間に挿入ってくる。硬くて、太くて、熱いそれを肌で包み込んでいるだけなのに、まるで体内への挿入を許したような気分になった。 　――あ、あ……ン……めっちゃ硬い……スゴイ…… 「んんっ……ぅ」 「気持ち悪くない？　こんなもん挟んで」 「わるくない……。……めっちゃ、かたいねんな、大和の……」 「っ……そ、そんなことも言ってくれちゃうわけ？」 　にゅぷ……とペニスがピストンされ、剛直が太ももを擦る。それは思っていた以上に淫らな感触で、予想以上の快感を俺にもたらす。 　しかも同時に、大和が俺のペニスを握りこむ。俺のそれもとろとろに濡れそぼっていて滑りが良く、軽くしごかれるだけで、淫らに腰が揺れてしまう。 「あ、あっ……やまと……っ」 「あーー……もう、じっとしてらんねーわ。動くよ？」 「う、うん……あッ……！」 　大和は俺の上に覆いかぶさりながら、激しく腰を使い始めた。大和が俺に腰を打ち付けるたび、ばちゅん、ばちゅっ、といやらしい音が寝室に響き、まるで本当にセックスをしているような気分になった。 　太ももに感じる大和の興奮も、俺の首筋に顔を埋めて声を殺す大和の吐息も、ペニスを扱かれる快感も、なにもかもがいやらしくて、たまらない。俺はいつしかさっきよりも声高に喘ぎ声を上げ、激しく揺さぶられながらシーツをきつく握り締めた。 「あ、あン、あ、あっ」 「……ハァ……っ……気持ちいいよ、佐波。あ……もう、ほんっと、かわいい……」 「ぁ、アッ……ぁ、あっ……やまと、ふぅっ……ンっ……」 「早く、挿れたい……佐波んナカ……。ハァっ……はっ……好きだよ、佐波……」 「っ……ンっ……ん、んんっ……！」 　耳元で色っぽく囁かれ、俺はあっけなくイってしまった。すると大和は、へなへなと顔を枕に埋めてしまった俺の腰を両手で掴み、さらに激しい動きでペニスをピストンし始める。 　ぱんぱんぱんぱん！　と弾ける音があまりにもいやらしく、俺も喘ぎが止まらない。 「ごめ……俺もイきそ……ハァっ……はぁっ……」 「あ、あっ……やまと、あぁっ……はっ……」 「イクっ…………ハァッ…………っ……んんっ……」 　びゅるっ……と迸った大和の精液から、すんと青い匂いを感じ取る。それはあまりにも性的な、若い雄の香り。どういうわけだか、腹の奥が、きゅんと甘くひくついてしまう……。 　――抱かれたい、早く……大和と本物のセックスがしたい……。 「佐波……好き」 「んっ……」 　後ろから誘われて、バックの体勢のままキスをする。 　しっとりと汗で濡れたお互いの肌を感じながら、俺たちはしばらく舌を絡め合っていた。