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最終話
「ただいま、陽太」
仕事から帰ってきた黒陽が、ソファーに座る陽太を後ろから抱き締めると頬にキスをした。陽太はそれを嬉しそうに受け入れながら、今まで見ていたテレビに視線を戻す。
今の時間、ちょうど夜のニュースが流れる時間帯で。たまたま、アルファとオメガのことについて放送していた。
つい最近まで、オメガはアルファの上に立っていた。これからもずっとオメガはアルファの上に立ち続けると誰もが思っていただろう。
しかし今、オメガの地位は地の底に落ちた。
そして今、法律で番のいないオメガの人権がこの世からなくなったというニュースが流れている。
「番のいないオメガ、これから大変だろうね」
「………………」
「でも、大丈夫。陽太には俺がいるから」
棘の付いた縄で、ゆっくりと雁字搦めにされている感覚がした。黒陽が触る度に、その感覚が増えていく。
幸せなはずなのに。
黒陽と番になれて、誰にも否定されない関係になれて。
誰にも邪魔されないように2人の世界で生きているというのに。
黒陽と自分の血が混じりあった子供が、今腹の中で生きているというのに。
「愛してる、陽太」
「おれも、あいしてる」
むかしの、であったころのこくようを。
END
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