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第6話

今までジッと動かずにいた黒陽が、腕を伸ばして陽太の胸ぐらを掴んでいる成久の手を払い除けた。そして、陽太を抱き締めると何にも汚れていないキレイな項に黒陽は噛み付いた。 「あ、あぁっ」 陽太がピクピクと震え、自分を抱き締めている黒陽の腕にしがみついた。成久も勘助も、目の前で起きている事実が受け入れられなかった。 アルファが、オメガの命令なしに項噛み付いたのだ。 確かに、陽太は黒陽を番だと言っていた。しかしそれは、項に噛み付けと言う命令ではない。意味合いは一緒かもしれないが、それはただの狂言だ。 オメガが初めて「項を噛め」とアルファに命令した時にだけ、その行為は行われる。 その言葉なしにアルファがオメガの項を噛むなど、言語道断。 「こ、黒陽。貴様、アルファの分際で何をしている」 怒りを押さえた様子で、勘助が黒陽に問いかける。しかし黒陽は勘助の言葉に耳を貸さず、項を噛まれて気を失ってしまった陽太を大事に抱き上げていた。 「黒陽!?」 「――――――オメガは、俺達アルファを見くびりすぎた」 陽太の目尻にキスを落とした黒陽が、冷徹の笑みを勘助達オメガに向ける。それは絶対的支配者の瞳で、誰もが黒陽を前にして動くことが出来なかった。 「お前達オメガは俺達アルファを“子供を作るだけの道具”としか思ってないようだが。アルファからすればお前達オメガは“子を孕むだけの存在”だ」 何故、ただ発情期でフェロモンを垂れ流すしか能のないオメガがアルファの上に立つ。 何故、子を孕むことしか出来ないオメガがアルファの上に立つ。 何故、なぜ、ナゼ。 「もう、オメガの時代は終わりだ」 黒陽のこの言葉を皮切りに、今まで強いたげられてきたアルファが動いた。自分を主を、はたまた今日あったばかりのオメガを犯した。 オメガは泣き叫ぶ。助けて、助けて、と。 しかし、オメガの助けを聞き入れる者はここには誰1人としていなかった。 そう。ここにはもう、ただの子供を孕むしか能のないオメガを助ける者(アルファ)などいないのだ。 「帰ろう、陽太。2人の世界に――――――」

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