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第7話

竜蛇は全てを飲み干した犬塚の唇を指でなぞる。 「はぁ……早く、消してくれ……」 竜蛇の秀麗な眉がピクリと動いた。 ……そんなにブランカが気になるか? 「お前は本当に俺を煽るのが上手いな」 「……え?」 竜蛇は犬塚の顔の上から退き、内視鏡をアナルかた引き抜いた。 「ぁあ!」 「こんな細いのじゃ物足りないだろう?」 今度は太いバイブを持って、犬塚の眼前に晒した。 「嫌だ!! そんなモノッ!」 「お前の淫乱な穴にハメてやろう」 「竜蛇ァ!」 ズブリ……と大きな玩具が容赦無く犬塚の後孔に突っ込まれた。 「ひぃ、あ! あ!……嫌だ! や、めろぉッ!」 犬塚の痩身が若木のようにしなる。 竜蛇がバイブのスイッチを入れた瞬間、絶叫のような喘ぎを喉から迸らせた。 #sozai276_w# 「ぁあ! あっ……いやぁあ、ああッ! 嫌だ……竜蛇ッ!」 犬塚のアナルをバイブで犯しながら、竜蛇は冷たい琥珀の瞳で見つめていた。 犬塚は身悶えながら潤んだ黒い瞳で竜蛇を見上げた。 体は熱くなるが……心は冷えてゆく。 竜蛇はいつでも『愛している』『お前が可愛い』『俺にはお前だけだ』と囁き続ける。 鞭打つときでも、縛るときも、蝋燭で責め苛むときでも…… そして犬塚が溺れてしまう、あの濃厚で甘い口付けを何度もするのだ。 だが今日は…… 一度も犬塚にキスをしてこない。いつもの甘い囁きも無く、ただ硬質な琥珀の瞳で見据えて、道具で犬塚を責める。 ─────嫌だ……こんなの……ッ!! 犬塚の黒い瞳から生理的ではない涙が零れた。 「嫌だ……嫌だ! 嫌だ!」 犬塚は拘束されたままめちゃくちゃに暴れだした。 「もう嫌だ! そんなモノ! 嫌だッ……いらない!」 「こんなに喜んでいるくせに」 竜蛇は嗤って、くちゅりと犬塚の濡れたペニスを撫でた。犬塚は必死で首を左右に振った。 「そんなモ……ノ抜けッ!……あんたが……あんたの、もう……いれろよッ!」 「犬塚」 竜蛇が玩具で責める手を止めて、犬塚を見た。犬塚は顔を拘束された腕に埋めるようにして言葉を紡ぐ。 「もぅ、嫌だ……こんな……なんで……今日は……しない」 「何だ?」 犬塚は震える唇を舐めて小さく呟いた。 「なんで……キス……しないんだ」 「……」 「ぅあッ!?……ん、むぅ!」 竜蛇が急にバイブを引き抜いたので、犬塚はたまらず悲鳴を上げた。その唇を竜蛇が塞ぐ。 「あ、ぅん、ん……ん」 すぐに舌を絡め、深く、深く口付けた。犬塚も舌を絡め返してきて、互いの唾液を啜りあう。 犬塚は夢中になって竜蛇の舌を吸い、その口付けに酔った。 長い接吻をようやく解き、竜蛇が犬塚の首筋に顔を埋めて囁いた。 「参った……すごい殺し文句だ」 顔を上げた竜蛇の瞳からは冷酷さが消え、困ったように笑っていた。 「俺の負けだ。犬塚」 ちゅ、と犬塚の唇にキスを落とす。 「なんで、こんなこと……」 「俺はお前に惚れているんだ。嫉妬もする」 骨張った指で犬塚の顎を掴み視線を合わせた。 「分からないか? お前を支配したいし、独占したい。」 「……竜蛇……もうしてるくせに」 「……犬塚」 「動画……消さなくて、いい。あんただけが見るなら……」 目を伏せて犬塚が小さく呟いた。 「可愛い事を言って、俺を操る気か?」 「違……んんッ!」 再び竜蛇の唇が犬塚の唇を奪った。いつもの犬塚が蕩けてしまうあの口付けで犬塚を溺れさせた。 「もう一度、挿れてって言ってみろ」 「や……」 「お願いだ。犬塚。お前が欲しい」 竜蛇は先程までの冷たさが嘘のように、燃えるような情熱を湛えた琥珀の瞳で犬塚を視線で貫く。 犬塚は竜蛇の琥珀の瞳に射抜かれ、無意識に掠れた声でねだった。 「ぃ……れて……くれ」 その声に応えるように、竜蛇の雄が一気に犬塚の雌の穴を貫いた。 「あぁあああッッ!!」 拘束された犬塚の痩身が大きく仰け反り、喉を反らし絶叫を放った。 「ああ。熱いな……犬塚」 「ああ! ああ!……はぁ、あ、あぅう!」 竜蛇は破れたドレスを纏う犬塚の腰を抱いて、ぐっと突き上げ、奥の奥まで貫いた。 「あぁあ……あつ、い……たつ…だぁ……あ、は!」 「ああ……犬塚、可愛い」 足の拘束を外し、ピンヒールを履いた両脚を抱え上げた。激しいスラストで犬塚のアナルを責める。 「はっ……愛しているよ。犬塚」 足首を掴み頭上に倒した。真上からガツガツと犯す。 「ひぃい、ああッ! やぁ……う、うぅうあ!」 「いつか、お前の全てを支配してみせる。」 「あ! あ! 竜蛇ぁ……はぁあ!」 「お前は俺のものだ……!」 眩暈がするほどの責めと執着心と、男の熱に犬塚は酔い痴れた。そして心の片隅で思う。 ──────支配されるものか。 全てを手に入れれば、竜蛇は自分に飽きてしまうかもしれない。 竜蛇がこんなにも自分に執着するのは、思い通りにならないからだと犬塚は思った。 竜蛇の甘く残酷な愛情に溺れてしまいそうになりながら、犬塚は必死で耐えた。 だが犬塚の思いとは違い、竜蛇の犬塚への執着心はそんな生易しいものではなかった。 手に入れたら飽きるなどあり得ない。 竜蛇の執着も愛情も肉欲も、犬塚の思うよりもずっと深く、重いのだ。 いずれ、身をもって知ることとなる。

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