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第1話

「しぐ……れさまぁ。今はおそう、じ中で……あっ! だめで……ふぅん」 「梓馬(あずま)は全然だめって顔をしていないね。ほら、窓拭きはいいのかな?」  時雨(しぐれ)様は涼し気な顔でさも、悪いことはしてませんと言った面持ちで僕に下半身を弄るなどという、破廉恥極まりないことをしでかしてくる。  僕はといえば、嬉しい。嬉しいけど。掃除中だからせめて十分程お待ち下さいと言いたいけれど、お待ちいただけないのが榛(はしばみ)家の次期当主、時雨様。  大変茶目っ気たっぷりの顔でいたずらを仕掛けてくるから、僕はたまったもんじゃない。とかいいつつ、期待に胸を膨らませているのは内緒の事。  好きな人――。時雨様。仕えて早三年。梓馬と呼ばれる僕、朴木(ほおのき)梓馬。体はいつの間にかすっぽりと時雨様の腕の中に居た。 (ドキドキ……ドキドキ……) 「ドキドキしているね。いつも、可愛らしい声で私の前で痴態を晒してくれる可愛い私の執事は、今日はどんなことをされたいのかな?」  クスクスと笑いながら僕を離そうとしない時雨様に体だけは『いやいや』をするんだけど、見透かされてるのは当たり前で。僕は抱かれたい。貪られたい。愛されたい。って思っている。  執事とご主人様の秘密の逢瀬。  高校一年生になった頃から続く逢引。  そう、淫らな事なんて知らなかったの僕は、最初は何をするんだと噛み付いたのだけれど、愛されれば愛されるほどに溺れてゆき、しまいにはの時雨様に抱きしめられただけで『キュン』と胸が弾んでしまう。もう中毒患者ともいえよう。時雨様のことをお慕いして、お慕いして、今に至る訳で。時雨様の虜(とりこ)。 「何されたいか言ってご覧。可愛がってあげるから。私にいじられて、身悶えて羞恥心に悶える梓馬がみたいよ」  それだけでカッと顔を赤らめているだろう。僕の羞恥にもえる表情が時雨様のいたずら心を大いに悩ませ、魅了していることを知らない。  いつの間にか服ははだけていて、首元に時雨様からプレゼントをされたチョーカーがカチャリと音を鳴らす。紅のベルベット生地に、ガラスのバラと蝶がアクセントになった、素敵なチョーカー。これは僕のとっても大切なモノ。  僕はΩで、時雨様はα。早く噛んでくれないかななんて思っている。発情期がまた来たら。 「ぁぅぅ……僕はその、時雨様の執事です。何をされても、光栄です。その……時雨様に抱かれるなら本望で……ぁ」  敏感になってぷっくりと野いちごのように膨れ上がった乳首をきゅむりとつまむと、つい艶やかな声がでてしまう。  だって、毎日のように抱かれ、身も心も時雨様のモノ。  時雨様はニッコリと笑って、首をすくうと、甘くほろ苦い大人のキスをしてくれる。

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