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第14話
「ごちそうさまでした。今度は時雨様に気に入っていただけるように作ります。時雨様から考えて、その……僕が作ったスイートポテトでも晴人様は喜んでいただけると思いますか?」
「喜ぶとは思うけど、一番いいのは『梓馬が自分にリボンを巻いて僕がプレゼントです』っていえば早いとは思うけど……」
「それも考えたのですが……いい気分はしいなくて、や――」
「梓馬は誰にも渡さないよ。私だけのモノだから。ね?」
いつの間にか僕は、時雨様のお膝の上に座らせられている。
(なんで!? いつの間に!)
「梓馬の抱き心地は最高だね~」
『ッギュ』と抱きすくめられている状態で至極幸せそうに言われるので僕も幸せになってしまって……。
自然と首に腕を回してせっつくようにキスをねだると顔が近づいて来て――。
「ぺろり」
「――っひゃ!」
唇の端をなめ上げられた。なんだろうと思って時雨様を見ると
「食べ残し。ごちそうさま……っていいたかったけど、こっちも味わってもいいよね?」
「へ? 味わう?」
ニッコリと笑顔を浮かべたまま僕の燕尾服の襟を乱して鎖骨にキスを落とされる。勿論痕を付けられる。キスマークもいっぱいされてる僕は、夏じゃなくて良かったとつい思ってしまう。
プールがある時、ついてたときがあってそれを見て友人にそっと絆創膏を渡されたことがあって、それで恥ずかしい思いをしたから。
「こーゆー事わかったかな? わからなくても始めるけど……。何やら考え事をしているね。私以外の誰かだったら……」
「あ、違います違います! プールの季節じゃなくて無くてよかったなって、キスマーク恥ずかしいというか、時雨様の証であるっていうのはすごく誇らしいんですけど、他の人には見られたくなくて。時雨様にもつけたくなっちゃうというか……あ、でも時雨様は……」
真希様の事を思い出すとずーんと暗くなる。婚約者だもんね。ただの執事である僕が口を出せない。いつか僕は抱かれなくなってしまう。そんなことはわかっているけれど、でも本当はずっとずっとこの優しい手で愛撫されていたいとか、お口でされるのもいいとか考えていたら、
何故か晴人様の事が頭に浮かび、この間された愛撫がかなり気持ち悪くて、ふつふつと嫌悪感がこみ上げてきて思わず目を瞑ってうめいていると、
上からクスクスと笑う声によって現実に引き戻される僕。でも手が……。
「私の事を放ったらかしにするからいけないんだよ?」
普段僕がネクタイ代わりに結んでいる赤いリボンで手を結ばれていた。
「は、外してください。僕、ただ晴人様の事を考えていただけなのに……!」
「へぇ……君は私にこうやってベッドに押し倒されても、他の男の事を考えていたなんて……いけない子だなぁ」
あ、怒ってる。やばい……。気づいた時には遅かった。言うんじゃなかったって。
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