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第28話 梓馬、晴人視点

「時雨様何してるんですか?」 「梓馬静かに……」  どうしたんだろう? 晴人様の部屋のドアにコップを当てて耳をそばだてて。 「梓馬も聞くかい?」 「何をですか?」  目がきらきらしたまんま、さらりととんでもないことを言う。 「晴人の喘ぎ声。明日からかうのにうってつけだろう?」 「時雨様……やめましょうよ」 「だめ! 散々あいつには梓馬にちょっかいだされたから」 「えー……晴人様ごめんなさい」 ◇◆◇◆ 「兄さん、うるさい!」 「なんの事だか? 部屋まで聞こえてきたよ? 結構お盛んでしたね。京、晴人の味はどうだったんだい?」 「そうですねぇ……健気でんんん!!」  俺はすかさず京の口を押さえる。 「隠す事ないのに。無事梓馬のことは断ち切れたようでよかったよ」  兄さん聞き耳たててたな……。梓馬の事散々いじってきたから意趣返しだろうなぁ。  はぁ。兄さんは質が悪い。笑顔で言うから。 「兄さんからかうの子供っぽいよ」 「私は童心を忘れない大人だからね」  あーいえばこーいう。もう……梓馬もこんな兄さんのどこがいいんだかわからない。  京の口から手を外すと席に戻ろうと、する俺を遮る様に京が兄さんに向かって言い放ちながら行動に移す。 「こーいうことです。んちゅ」 「んん!! こら人前でするな!! あーもうなんだかわからなくなってきた!」 「見せつけられてしまったね。梓馬おいで」 「い、嫌です」  そりゃ逃げるよな。『いたずらしてやろう』って気、満々だもんな兄さん。  それにしても京嬉しそうだ。嬉しそうだと俺も嬉しい。  席に戻って京の姿を目で追うと可愛らしいなぁと。だのに、俺が挿れられる側で良いもんだろうかと。  いつか自分が攻める日が来るまで! ってまたする事前提で話してる自分に苦笑してしまった。  京に夢中な自分が愛おしい。京と目が合うとにっこり微笑まれて幸せ……噛み締めてる時に、隣でにやにや笑う兄さんの顔がうるさい。全く!  もうちょっと大人になって欲しいものだ。 「それにしても、ヘタレだよね晴人は」 「う、うるさいなぁ。俺は俺でしょ! 何を言ってるかわからなあい! 梓馬、俺兄さんにキスされたぞ? いいのか?」  キョトンとした顔をしている梓馬はジト目で時雨様をみている。ハハハ、ざまーみろ! 「晴人があまりにも自分の心に無頓着だからトリガーをひいただけだよ。やましい気持ちなんて一つもない。梓馬だけだよ。愛しているのは」 「あん、みんないいなぁ。いい人が居て。私だけじゃない……。みんなリアウ充でみせつけてくれちゃって。ずるいわ! もう、みんな嫌い!」 「「「「あ……」」」」」  口を揃えて唖然としてしまった。そして俺を含めてここにいる男性皆が、都に心の中で謝ったに違いない。

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