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13.告白タイム
あ、またビックリ顔。可愛い。癒される。
その気分のまんま両腕で抱きついて身体持ち上げ、もっかいキスした。
加賀谷さんは不動だ。俺の全体重が首に掛かってるぽいのに、なにこの安定感。うわあ好き。やっぱ神。
そう。
あのどん底の時、加賀谷さん見て輝きに圧倒されて、それからずっと――――
けど触れるなんて無理だって、そんでも妄想くらいイイだろって
「好きっすっ、めちゃめちゃ好きっすっ!」
こんな近くなれるとか、触ったりなんてありえねえ、なのに加賀谷さんが俺見て「座れ」とか言ったから、俺に言ったから、せめてサインもらおうって……したら見ててもイイって言ったんだよ加賀谷さんがっ!
だからもう、この三週間見まくってた、超幸せで夢みたいで……けどけどけど、けど触っちゃったら止まんないって、だってしょうがねえよ、しょうがねえだろ?
なんか分かんないモン盛り上がって
「めっちゃ、マジでめちゃ好きでっ!」
気づいたら言ってた。
「うるさい。そこで騒ぐな」
ため息と共に、加賀谷さんが呟いた。
うわっ、ああっ! 耳のすぐ近くで喚いてたっ!
「すす済みませんっ!」
囁くみたいに声落としたら、「分かったから離れろ」とか言われたけどっ!
「む、無理」
「無理ではないだろう」
「無理っす! 離れたくねえっ」
また、ため息が聞こえた。
「なんだそれは」
だって、だって加賀谷さんに抱きついてんだよっ!?
首根に埋めてる鼻には加賀谷さんの香り。香しい。
すげえ体温近い、あったかい。
それに息遣いまで感じられるこの距離感……ううう至福。
てか、さすがだよ加賀谷さん。
全力で抱きついてんのに安定感ぱねくて、こんな細くて俺よりだいぶちっこいのに、俺なんかよりずっと強い。
やっぱ、やっぱ……
「やっぱ加賀谷さん神」
「……なんなんだ、そのカミってのは」
「神っすよ神、神様」
ため息が聞こえた。
「………………馬鹿か」
「馬鹿じゃねえっす!」
「うるさい」
「だって俺!」
「うるさい」
なんか声がだんだん怒ってるぽい感じだけどココは引けねえ!
だって俺の神否定されてんだからっ! たとえ本人だとしても、許せねえっ、許しちゃいけねえっ!
「イイから離れろ」
「ヤですっ!」
「なんなんだおまえは……」
また聞こえた、ため息。
ため息が俺の髪にかかるの分かるんだよ? 離れられるわけねえじゃん? だって加賀谷さん逃げねえし、ガッシリ姿勢キープのまんま動かねえし、それに、それに、……なんで伝わんねんだよ?
だって加賀谷さんは俺の神なんだってばっ!
「俺ハイジャンやってて、中学ンときっ」
色々飛んでアタマ真っ白で言ってた。
「おい、なにを……」
言い始めたらもう止まんない。
「でも中体連で、県大会まで行ったのに膝やっちまってっ」
「………………」
「痛くて死ぬかって、そんで、そんで……せっかく県大会まで来たのに、頑張ったのに、試合出らんねえって……なんかもう滅茶苦茶で……そん時見たんス、走ってる加賀谷さん」
ああ、今でも脳裏にハッキリ浮かぶ。ぶっちぎりで走ってた、あの姿。
マジで神々しかった。
「めちゃ輝いてて、なんか別世界って感じで、もうコレ常人のレベルじゃねえって感動つか。帰るときも見かけて、なんか連まねえでひとりで立ってる感じぱねえって、やっぱかっけーって、一生ついてこうって俺……」
ガキの頃から妄想気味で喋り始めると引かれる事多くて友達少なくて、でもハイジャンやってる仲間とは違ってて、だからハイジャン大好きになって、でも出来なくなって。
でもさ、加賀谷さんに妄想集中したら、他で妄想しなくなったんだよ。したら友達もできたんだ。
なんかだんだん、涙出そうになってきた。てかコレ神の前で告白とか……いや告解とか言うんだっけ?
そんな感じかも。でもなんかスッキリした。言えて良かった。ずっと伝えたかった。
加賀谷さんは知らねえだろうけど、中二のその日から、膝の痛み引いて歩けるようになってから、ずっと追っかけやってた。なんなら自宅の場所も知ってるし、二階のあの窓が加賀谷さんの部屋だあとかって見上げながら妄想爆発したこともある。お年玉とか小遣い貯めて、そんでも足んなくて親に金借りて一眼レフ買った。加賀谷さんの神映像残すため。この高校に来たのも……
それ伝えたかった。加賀谷さんが俺の神なんだってこと、分かってもらって……それでナンだとか、考えてなかったけど。
加賀谷さんは動かない。ため息も聞こえない。
もしかしてめちゃ怒ってる? けどいい。
「蹴っても殴ってもイイっす。タマ潰れてもオカマになっても、俺加賀谷さん見てたいっす」
加賀谷さんになら殺されたって……いやダメか。死んだら加賀谷さん見れなくなっちゃう。
「好きっす、ずっと……神っす」
だから加賀谷さんは神。俺を救ってくれた神。姿が神々しいだけじゃない、存在そのものが神。加賀谷さんのためならなんでもする。死ぬのはいやだけど、タマ潰れても半死になっても我慢する。
「……そのカミとかいうのを……」
「だって神様だしっ」
久しぶりに聞こえた、唸るような声に条件反射的に回答したら、久しぶりにため息が聞こえた。
「………………」
なんか怒ってねえみたい?
マジか、じゃあもっと触ってもオッケ?
てか最初は顔見て声かけてもらって、もうそれで十分幸せってか、あとそうだな、ヨシヨシとかしてもらえたらっ! なんつって思ってたけど……サインもらえて触ったり出来て、公認でガン見しまくって……そんで部屋に招いてもらってこんな風にくっついてたら、そんだけでドキドキするし、もっともっとって……
どんどん欲張りになる俺。イイじゃん? イイんじゃね?
てかそうか! 僕 にしてもらえば! なんでもします的な! いつもおそばにいます的な!
コレなんて言う? なんて言えばイイの? えっとえっと……
「俺のこと、なんでも……加賀谷さんの好きにしてっ!」
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