2 / 10

第2話

一番小さいカボチャにペンで顔を書いて、中のタネとワタを取り出し、目と口をくり抜いた。カボチャが硬くて手が痛くなってしまったけど、よく写真などで見たことのあるカボチャの顔になっている。翔太が帰って来たら見せてやろう。 僕は、少し気分を高揚させながら、残りのカボチャで調理を始めた。 僕は、一人暮らしが長かったから、そこそこ料理が出来る。一番大きなカボチャと一回り小さいカボチャのヘタを大きめに切って中身を取り出し、グラタンの具材を作る。カボチャを器に具材とソースを入れて、あとは焼くだけにしておく。サラダも作り、デザートにカボチャのパイも焼いた。栗は、明日もち米を買って来て、栗ご飯を作ろうと思う。 カボチャで作った顔が一つあるだけで、とてもハロウィンっぽい感じがして、「翔太、早く帰って来ないかなぁ…」とワクワクしながら呟いた。 その時、スマホの着信音が鳴ってビクリと肩を跳ねさせ、慌ててスマホを持ってタップした。 「もしもしっ、翔太?ねぇ、今ね…」 『凪、悪い。急に部署の皆んなで飲みに行くことになってさ…。ちょっと遅くなる…、わかってるってっ、ちょっ待ってろ…あ、ごめんな、なるべく早く帰るから…』 「…うん、わかった」 すぐに切れたスマホを見つめて、僕は鼻の奥がツンとなった。 翔太の後ろで、可愛らしい声が聞こえた。僕とは違う、女の子の高い声。名字ではなく「翔太さん」って呼ぶ甘えた声…。 翔太は、今は僕を好きだと言ってくれるけど、元々は女の子が好きだった筈だ。あんなに可愛らしい声の子が甘えてきたら、僕のことなんて嫌になるかもしれない。 一人で勝手に悪い方へと考えて、堪えていた涙をポロリと零す。僕はふらふらとソファーに寝そべり、クッションを抱きしめて静かに泣いた。

ともだちにシェアしよう!