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第10話 R-18 翔太side
飲み会に行くという電話をかけた時、凪の様子がおかしい気がした。
凪のことが気になって早く帰りたかったけど、渋々参加したビンゴゲームで貰った景品を見て、俺のテンションは一気に上がった。
いつかは凪に、こんな格好をしてもらいたいと願っていた。凪は素直に着けてくれないかもしれないけど、俺の人生をかけてお願いしてみよう。
俺は二次会への誘いを断って、速攻で凪が待つ家に帰った。
凪は、ソファーの上でよく眠っていた。鞄と荷物を置いて顔を覗き込むと、白い頰に、涙の筋がついている。「そんなに寂しかった?」と呟いて、凪の肩を揺すって起こした。
長い睫毛を震わせて目を開けた凪が、「僕が女の子だったらよかった?」と、いきなり聞いてきた。
俺は驚いたけど、たぶん、今までずーっと不安に思っていたことなのだろう。
男だろうが女だろうが俺には凪だけだ、ということを伝えると、凪はポロポロと涙を流した。
俺は、凪が愛しくて堪らなくなって、早く凪と繋がりたくて、凪の身体中に手を這わす。
ふと、ビンゴで貰った物を思い出して、凪に着けてくれるように頼んだ。
案の定、凪には拒絶されたけど、俺が先に着けるならしてもいいと言う。
どうしても可愛い凪の姿を見たかった俺は、似合わないのはわかっていたけど、猫耳の被り物を被り、尻尾つきパンツを履いた。そして、羞恥心をかなぐり捨てて、堂々と凪の前に立った。思った通り初めは笑っていた凪が、「黒豹さんだ」と言って、次第に目をキラキラさせ始めた。
意外な好評価に気を良くした俺は、凪に噛みつく勢いで、白い肌を味わった。
いつも感じやすい凪だけど、今日はより一層敏感になっている。俺の、この格好のせいだろうか。
トロリとした目で俺を見つめる凪の頭に、猫耳の被り物を被せて、猫の手も着けた。特に抵抗をされなかったことにホッとしていると、凪が、猫のように手を曲げて「ニャン」と鳴き真似をした。
俺は、ほぼ無意識にスマホを掴み、凪の姿を連写した。それに対して凪が文句を言ってたけど知るか。可愛過ぎる凪が悪い。
俺の体温は一気に上昇し、股間のモノは暴発しそうに膨らんでいた。
そこからは、俺もいつもより興奮して、時々凪に意地悪をしながら、激しく攻め立てた。
ほぼ同時に果てて放心状態の凪に、俺は素早く尻尾つきパンツを履かせて、また連写した。
撮った写真を見ていると、俺の股間に再び熱が集まってくる。でも凪が作った料理を早く食べたかったから、後でもう一度じっくり抱き合おうと決めて、凪を抱えて風呂場に向かった。
凪は、カボチャを器にしたグラタンを作っていた。それだけじゃなく、パイまである。
実家から送って来たからと言って、こんなに手の込んだ物を作ってくれる凪に、とても感謝だ。
俺は熱々のグラタンを口に入れながら、「もうすぐハロウィンだからハロウィンぽくしてみた」と可愛いことを言う凪を、目を細めて見た。
パイを口にした時に、ふと、そういえば凪は酒にメチャクチャ弱かったな…と思い出して聞いてみると、パイにラム酒を入れたと言う。だからいつもより素直で敏感になってたのか、と納得しかけた。
だけど…、一口くらいは飲める凪が、パイに入れるくらいの少量のラム酒で酔うか?
俺は、少し疑問に思い、 極上に美味いパイに頰を緩ませながら、テーブルの端に置かれたカボチャの顔に、チラリと目をやる。
凪が、硬いカボチャを懸命に彫って作ったなかなかに雰囲気のある顔。
ーー猫の被り物でも少量のラム酒のせいでもなく、もしかしておまえが何かした?
そんな非現実的なことを考えて、俺は小さく笑いを漏らした。
その時、俺の笑いに応えるように、緑の顔の口角が動いたように見えて、身体が固まってしまう。
凪の「コーヒー淹れるね」と言う声に、フッと身体が弛緩して小さく息を吐いた。
もう一度見たカボチャは、最初に見た通りのただのハロウィンカボチャだ。俺は、カボチャを手に取ると、キッチンに立ってこちらに背を向ける凪に聞こえないように、小さく「ありがとな」と囁いた。
【終】
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