トントン拍子で進んだ婚約の話。 あっという間に俺と星流は、互いの家族公認の許婚になった。 朝は星流の家、夜は俺の家で互いの家族とご飯を共にし、登下校と休み時間は一緒に過ごし、週末はどちらかの家に寝泊まりする。 出来るだけ沢山の時間を共にした方が早く仲を深められる。 互いの両親から諭され、先ずは外堀から攻めるのも悪くないか。 喜んでその話に乗る事にした。 一緒に居て気付いたのだが、星流。 もしかしてアイツの事好きなのか？ 芹生翠葵(せりょう みずき)。 いつも星流の近くに居る友人。 明らか星流の態度や表情が、他者と違うのが見て取れる。 完全に気を許しているのか表情が柔らかいし、自然に甘えている。 パッと見唯の親友なのだが、時折甘く熱い視線が絡み合う。 気になって調べたら、どうやら二人は元許婚同士で互いに嫌いになって婚約を解消したワケではないらしい。 多分両片想いなのだろう。 何かきっかけがあれば直ぐにでも簡単に両想いになれるに違いない。 何となく嫌な予感はしていた。 一目見た瞬間から俺は星流に心を奪われたのに、星流はそうではなかったからだ。 好きな人が居たから運命の番に落ちなかったのだ。 運命の番とは本能で求め合う物。 出逢った時好きな人が居なかったら落ちて当たり前。 実際俺も一目惚れをした。 可愛い声と仕草、綺麗な顔。 全てが俺を惹き付けて止まない。 一緒に居ると幸せを感じつつも支配欲が沸く。 嗚呼、早くこの美しいΩを自分の物にして抱き締めて、その白くて細い項に噛み付いて番にして孕ませたい。 勿論実際にそんな事はしない。 理性のない獣じゃないんだし、嫌われたくないからだ。 星流とはゆっくり心を通わせて好きになって貰いたい。 そう思っているのに、二人を見ると心がざわついて時折自分で自分の気持ちがセーブ出来なくなる。 初めて迎えた週末。 俺の家のそれも俺の部屋で一緒に過ごすのだが、大丈夫かな？俺。 我慢出来るか？ 初めてのお泊まり会で速攻手を出すとか早すぎるし、まだ俺達はその段階ではない。 近い将来番になって結婚するんだ。 ずっと一緒に居られる。 急ぐ必要はない。 星流の気持ちが俺に向けられる迄我慢して待とう。 そう紳士的な考えを持っていたのだが、何故こうなった？ ｢やっ、やだ。先…輩、いや｣ 俺は星流を無理矢理組み敷いていた。 初めては優しく、互いの気持ちが結ばれてから大切にするつもりだった。 好きだ、愛してる。互いに口にし合って幸せに満たされながら愛しあう。 そんな夢みたいな幸せを想像していたのに、現実は残酷だった。 初めて招き入れた自室。 元々気になる程散らかってはいなかったが、ゴミ1つない位必死に掃除をし、星流を招待した。 自分の部屋に星流が居る。 いつもの部屋が唯其処に星流が居るだけで、全くの別物に変わる。 俺を翻弄する大好きな甘い香り。 愛しくて堪らない。 堪らず 「星流」 そっと指先で星流の前髪に触れた。 嗚呼、なんて可愛いんだ。 俺の星流。 俺の宝物。 愛しさが込み上げて止まらない。 そっと指先を動かし、頬を撫でる。 好きだよ。口にしようとした時だった。 （星流？） 星流の瞳から涙が零れた。 どうした？ もしかして痛かったのか？ 優しく触れた筈だったが。 爪は短く切ったし、手荒れもしてないよな？ あっ、軽く触れたつもりだったが、もしかして髪引っ張ってしまっていたとか？ 泣かせてしまった理由が分からず焦っていたら ｢ごめんなさい、先輩。僕翠葵が、親友が好きなんです｣ 星流から哀しい告白をされた。 星流の気持ちは知っていた。 だが、聞きたくなかった。 抉られた心。 ごめんなさい、ごめんなさい。 泣きながら何度も口にされ、俺はおかしくなった。 ｢ごめんな、星流。俺星流が好きだから婚約解消出来ない｣ そう言うと俺は星流を抱き上げ、ベッドに移動した。 「っぁ、んぁあ、ふぁっ」 最初は泣き叫び、激しく抵抗していた星流だったが、番の本能には勝てないのだろう。 気が付くと、高くて甘い蕩けそうな位可愛らしい声と仕草で俺を求めていた。 「ぁ、先輩。もっと、もっとして？」 キュッ。キスを強請りながら首筋に腕を回されそれに応える。 舌を絡め軽く吸い上げると （うっわ、凄っ） 星流の中がピクピク蠢いた。 どうやら星流はキスが好きらしい。 優しく髪や耳、項を撫でながら唇を重ねると中が喜んで俺をキュウキュウ締め付ける。 堪らず中に欲望をそのまま放ってしまったら、それが余計刺激を与えたらしい。 快楽以外何も考えられなくなってしまったのか、星流は際限なく俺を求めた。 勿論抱き潰しました。 大好きな人から求められたら応えるのは当然。 約3日間寝る間も惜しんで抱き合って過ごした。 嗚呼、俺の嫁がエロ可愛過ぎる。 幸せだ。 だが、心はまだ落ちていない。 星流の気持ちはアイツに向けられたまま変わらない。 だからと言って諦めるつもりは更々ない。 心より先に身体から手に入れる。 って、もう既に手は出してしまってるか。 「星流」 ピクンッ、呼ぶと反応する身体。 「おいで？」 逆らう事が出来ないのか、それとも無意識なのか俺の言葉に従う星流。 今はまだ呼ばれているからだけれども、いつかは自分から自然に俺の隣に来てくれる様になって欲しい。 「愛してるよ」 細くて綺麗な指に自分の指を絡ませ、芹生の前から星流を奪い去った。