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第15話
エスコートされた船の中はきらびやかだった。
メインホールを通り抜けてVIPルームらしい広い部屋に入ると、途端に人が寄って来た。最初のパーティで見たような、育ちのいい階級の友人たちだ。
「チャオ、リカルド」
「素敵なドレスだね、マリア」
「ありがとう。どなた?」
「友人のアキト」
「素敵な黒髪ね、日本人?」
「ええ」
「こちらにお住まい?」
「ええ、2ヶ月前からですが」
「よかったら私のパーティにも来て下さる?」
「ありがとう、機会があれば」
何人かと同じような挨拶を交わして、適当にリカルドが会話を切り上げた。さすがに社交慣れしていてごく自然な態度だったが、内心はそうでもなかったらしい。
「しまったな。君は女性から見ても魅力的なんだな」
光沢のあるシャンパングレーのスーツを着た加賀美は、すっきりときれいな顔立ちが引き立っている。
オリエンタルビューティの男性版に女性の視線が集中した。もちろんある種の男性からも。
「そう?」
自分の容姿の影響をきちんと把握している加賀美はにっこりと人当たりのいい笑顔を見せる。リカルドがそれを見て眉間に皺を寄せた。
「もっと似合わないスーツを選べばよかった」
子供みたいに拗ねた顔をするリカルドがかわいくて、加賀美は頬にキスをした。
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