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第19話
「おい、ちょっと…」
そこでノックの音がして、次の皿が運び込まれた。
加賀美は何食わぬ顔でいたずらを続けている。
リカルドにウニのパスタ、加賀美の前には四種のチーズリゾットがサーブされ、ウェイターが一礼して出ていこうとしたところで加賀美がフォークを落とした。
もちろんわざとだ。
振り向いたウェイターが素早く替えのフォークを差しだし、何食わぬ顔で「ありがとう」と加賀美は受け取る。
足先のいたずらはまだ続いている。
くにくにと器用にそこを揉まれて、リカルドは腹筋に力を入れた。ウェイターが床にかがんだら、テーブルの下の不埒なお遊びに気づくだろう。
もちろん気づいたところで上流階級の破天荒な振舞いに慣れたウェイターは何も言いはしないだろうが、露出の趣味はないリカルドとしては避けたい事態だ。
目線だけで焦るリカルドに加賀美は涼しげな笑みを見せて、足の指でさらにくいくいと押してくる。
ウェイターがしゃがんだところで、間一髪、するりと足を引いた。同時にウェイターがフォークを拾い上げ、そっと部屋を出て行く。
「まったく君は…」
リカルドが大きく息をついた。
加賀美はしてやったりと黒い目をきらめかせる。
「ドキドキしただろ?」
今度は左手をテーブルの下に突っ込み、遠慮なくそこを確かめた。
半ば勃ちあがったふくらみを愛おしげな手つきで撫でさする。
「ほら、興奮してる」
これ以上はない魅惑的な笑みを浮かべて、まるで悪びれた様子もない。その唇が、舌がどんなふうに男を煽り立てるのか、一度味わったから知っている。
「頼むからこれ以上煽らないでくれ」
額を押さえてリカルドは呻くように呟いた。
「何言ってるの、お楽しみはこれからだろ」
リゾットを上品に口に運んで、加賀美はいかにも楽しげに笑う。
「まだ魚も肉もデザートもあるよ」
食事の間じゅう、こんないたずらを続けるつもりなのか。
リカルドは嘆息して、天井を見あげた。
ずいぶんと刺激的なディナーになりそうだ。
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