26 / 33

第26話

 リカルドが持参した日本酒で乾杯する。  涼しげな江戸切子の中身は加賀美が贈った日本酒だ。  一口飲んで、それに気がついてにっこり笑う加賀美は、何かたくらむ顔つきだ。 「アキト。これ、単なるプレゼントじゃないんだろう?」 「いや、プレゼントだよ。俺とセットでね」  繊細な切子グラスを傾けるリカルドの手が止まる。  つまり…?  まじまじと加賀美を見つめるリカルドに、思わせぶりに微笑んですいっと酒を飲みほした。 「アキト、素敵だ…」  初めて見る加賀美の裸体に、リカルドはため息をついた。  加賀美は出し惜しみしなかった。今まで散々焦らしたのが嘘のように、リカルドの求めに応じて素直に服を脱ぎ捨てた。  料理人は意外に体力勝負だ。食材や料理がたっぷり入った鍋など重い物も運ぶし、長時間の立ち仕事で自然に鍛えられている。  きれいに筋肉のついた細身の体にリカルドは隅々まで口づけて、舌でも手でも味わった。  どういう風の吹き回しなのかは知らない。  熟成期間が終了したのか、あるいは何度かデートして「それなりに知り合った」と認定したのか。もしかしたら、ただの気まぐれということもあるだろう。  何でもよかった。  欲しかったごちそうを目の前に出されて、手を出さないほどリカルドは我慢強くはない。 「あ、はっ…、もっと」  加賀美は両腕を巻きつけてリカルドの体を引き寄せた。 「もっと? こう?」 「んっ、あ…」  首筋から鎖骨へと口づけを落とす。  リカルドの情熱的な口づけにいくらでも応えてきて、奔放に快楽を得る姿に嫌でも煽られる。素直に感じて目元を染めた表情が、壮絶なくらい色っぽかった。 「あ、あっ、リカルドっ…」  喘ぎ交じりに切なく呼ぶと、ぐっと力強く突き上げられた。  焦らした反動なのか、リカルドは性急に求めてきた。初めて会った時の上品な口づけより、今みたいに荒々しくされるほうが加賀美の好みだ。  ほらね、熟成させたほうがうまくなっただろ?  もっと強くねだって来いよ。  加賀美の上から両腕をついたリカルドに微笑みかけて挑発すると、リカルドは噛みつくようなキスをした。  淫らな音が部屋に響く。奪い合うようなキスを交わしながら、加賀美の体を奥まで暴こうと腰を打ちつける。  初日に寝ていたら、きっとこんなセックスじゃなかったはずだ。

ともだちにシェアしよう!