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第1話
「へっ!?」
病院の診察室で鉄平はすっとんきょうな声をあげた。
なぜ鉄平が病院にいるかというと、献血した時、血液検査で何かに引っかかったと呼び出されたのだ。
鉄平は定期的に献血に行っていた。人の役に立てるし、ドリンク飲み放題でお菓子も食べ放題で漫画も読めるし、おまけに粗品も貰えるからだ。(あくまでも人助けになるから、という気持ちがメインである)
そんな気持ちで献血ルームに行ったところ、病院に呼び出され、お医者さんから衝撃的なことを言われのだ。
「だから君、Ωだよ」
「えっ。俺、βですけど」
「うん。本来なら13~15歳の頃にΩかどうか分かるはずなんだけどね。君は発育が遅かったんだね」
鉄平は呆然とした。
Ω? 俺、Ωなの?
待って、Ωってどんなだっけ?
「発情期の事とか妊娠の事とか、学校で習ったとは思うけど、説明しておくね。発情期もいつくるか分からないから、抑制剤も処方しておくからね。君、パートナーはいるの?」
「あっ、はい。あの、αの……」
「そうか。番だといいね」
つがい……、番ってなんだっけ?
鉄平の頭はパンク寸前だった。うろ覚えの知識を総動員しつつ、お医者さんの説明を一生懸命聞いた。
Ωは3ヶ月に一度、発情期があり妊娠できる。
発情期は4~7日近く続く。
Ωとαの間に番 と呼ばれる特別な絆がある。運命の相手だ。
番と出会ったΩは番以外には発情しなくなる。全てを捧げて愛し、そして愛される相手なのだという。
一通りレクチャーを受けた鉄平はフラフラしながら病院を出た。
俺、Ωだって……赤ちゃん産めるってこと?
しろうとの赤ちゃん、欲しいなぁ。
志狼と子供が作れる事を想像して鉄平はドキドキしてきた。本当に本当の家族になれるのだ。
志狼に似た子供なら、きっとすごくカッコいいだろう。
そこで、はたと気付いた。
……番じゃなかったら、どうしよう。
志狼以外の誰かとなんて絶対に嫌だ。だがこればかりは分からない。
「……どうしよう」
鉄平は不安になり、俯いて履き古したスニーカーを見つめた。
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