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第1話
「長山先輩、どう?」
「おお、いいねー。どの角度からでも美女に見える」
「はい、神坂先輩も自分で鏡見て。元がいいからメイクも楽だったよー」
神坂涼 は鏡を渡された。
「ほんと想像以上に良いよ」
長山先輩と呼ばれた長山糺 は涼の顔を覗き込み、にっこり笑った。
糺に良いと言われ、涼は渡された鏡で自分を見る。まあ、女に見えなくもないかな…。
「神坂先輩、可愛い〜。写真一緒に撮って」
「私も私も」
涼の周りに、ハロウィンコスプレした後輩達が集まって来た。
「おい、ちゃんと撮影準備してるか?」
涼とにわか撮影会に夢中のメンバーに糺が声をかける。
「準備って、パーティで盛り上がればいいんでしょう?」
「簡単に言うなー。映研サークル元部長の俺の、集大成映画だぞ」
「集大成って、これは思いつきで撮る事にした20分のギャグ映画じゃないですか。だいたいハロウィンパーティで皆んなが仮装してる時に本物の吸血鬼が来る、題名が『ビデオを止めるな』ってパクリ感半端ない」
後輩の一人の留美が笑いながら指摘する。
「実は神坂先輩の女装見たかったとか?」
「わーそうかも!仲良すぎるし」
「どっちもイケメンなのに彼女いないのは、そういう事?」
キャーキャー騒ぐ後輩女子達にため息つきながら糺が言う。
「あのなぁ。涼を相手役にしたのは女子達への俺の気遣いだよ。吸血鬼役の俺がおもちゃの歯をつけてとは言え、首に噛み付くんだぞ。そんな役、頼まれても嫌だろう?」
「長山先輩なら首噛まれてもOKの女子、いっぱいいますよ」
後輩女子達がそう、私OKだったのに、などとアピールしている所へ3年の現サークル部長、今回撮影係をする原田がやって来た。
「長山先輩、準備整いましたよ」
「良し、始めるか。スタンバイ!」
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