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第2話
映研サークル仲間でハロウィンパーティしようという話しになった。去年までサークル部長だった4年の長山糺 が、パーティついでに吸血鬼映画を撮って学祭に出すと言い出し、映画好きのメンバーも賛成、本日本番を迎えている。
本物の吸血鬼を誰もがハロウィンコスプレと勘違いして、あしらわれるというギャグテイストですすみ、最後に一人の美女が噛まれ、吸血鬼に変化した事に周囲が気づかず今後どうなる?という余韻で終わる20分程の短編。
「トリックオアトリート!」
「ハッピーハロウィン!」
元々本当にハロウィンパーティする予定だったので、主人公の吸血鬼と絡む役以外の参加者は、盛り上がれば良いという段取りのみ。楽しげに言葉を発するパーティ参加者兼、エキストラ達。
糺扮する吸血鬼が、神坂涼 扮する美女の首に噛み付くシーンの撮影が始まる。
「この角度から、まずアップ。次はここの位置からなめて(カメラを下から上に動かす)」
撮影する原田に糺が指示を出す。
糺が吸血鬼の歯をつけて涼の首に噛み付く。カメラアングルを変えるために一度止めると涼が糺に言った。
「もっと強く噛んでいいよ」
「結構強くしてるよ。これ以上なら痛いだろ」
「いいよ、痛いのは平気だから」
「カメラスタンバイOKです」
撮影係の原田が告げると、涼は腕を糺の脇下から背に回し、首を傾け耳元で囁いた。
「噛んで」
「!…ちょ、カット!」
血流が自分の身体の中心に集中し、糺は慌ててカメラを止めた。
「どうしたんですか?」
原田が聞く。
「…あ、いや、ごめん。大丈夫、続けよう」
ー危ねえ、勃ちそうになった。
後輩女子達が言った事は当たっている。思い付きのような映画撮影は、涼を撮る口実。ハロウィンパーティ開催を聞いた時、吸血鬼ドラキュラと噛まれる美女、という設定を思いついた。
糺は自分が想像した以上に美しい魔女コスプレ姿の涼を見る。
ー遠慮せず、もっと強く噛んでいいのに。
こんな気持ちを知られたら、糺はどうするだろうと涼は考える。
男同士で気持ち悪いと蔑まれるだろうか。優しい糺はあからさまな嫌悪を見せたりはしないだろう。でも、同性でなくとも、糺を好きになる自由が自分には無い…。
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