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73.
シャワーを浴び終え、ペットボトルを手に取ったところでスマホが振動する。
いつもより長いそれは、着信を知らせるもの。
どうせまたハルあたりだ。あいつは暇なのか、と呟いて画面も見ずに応答した。
「…はい」
『あ…もしもし、』
ペットボトルを落としそうになって、思わず変に力を入れてしまう。べキッと鳴った音は向こうまで聞こえていないだろうか。
『え、と……ルイさん?』
静まり返った電話口を不審に思ったのか、遠慮がちに声をかけられて我に返る。画面を見れば『楓くん』の表示が。
「ご、ごめん。珍しいね…電話だなんて」
『すみません、もしかしてお休み中でしたか?』
首を振ってから、電話では伝わらないと思い直した。
「違うよ、仕事の準備してたところ」
『そうですか…良かった。ちょっと声が低かったので、寝起きかと思って』
あ、それとも機械を通してるからですかね?なんて楽しそうに笑う彼は相変わらず可愛い。
ハルだと思い込んでいたから、無意識に声色まで変わっていたのか。だとしてもすぐに察した楓くんは、やっぱり人の機微に敏感だ。
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