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「芹生、今回頑張ったな!」 教授から受け取った答案用紙には、今まで見たこともないような高得点が記してあった。 「ありがとうございます…」 解いている途中も、確かに手応えはあった。でも、驚異的に伸びた点数に驚いてしまって。 (こ、これは報告しないと………!) 全部、彼のおかげだ。 授業が終わり、時計を確認する。たぶん、この時間なら起きているだろう。 スマホを見つめて、悩む。 (……電話、したことなかったな) 面と向かって話す方が好きだし、今までの対人関係でもそうしてきたから。大抵の連絡は文面で済んでしまうこの時代だ。 (だけど…) お礼は、きちんと自分の声で言いたい。会って伝えることが叶わないなら、せめて。 それに、あの美声が機械を通してどう変わるのか…興味がないと言えば嘘になる。 深呼吸をひとつ。少しだけ震える指で、番号をタップした。

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