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75.
ごほうび、と口の中で反芻する。
小さい頃は慣れ親しんだそれも、この歳になるとすっかり懐かしい響きで。
『楓くんがしたいこと、叶えてあげる。どう?』
なんだか無性にわくわくしてきた。本当は遠慮するのが普通の対応なんだろうけど、頑張った今回だけは自分に素直になっても良いかな。
「それって、何でも…ですか?」
『…えっ?あ、うん…まぁ、俺に出来ることなら』
当惑したような声色のルイさんに、何を頼もうか考えを巡らせる。
「じゃあ、ええと…仕事、してるところ。見たいです」
『仕事…?』
「はい。きっとどんな女の人でも骨抜きにするような、すごい接客をするんだろうなあって」
普段あれだけ紳士的、かつ格好良く俺と話をしている彼が、自らのフィールドでどういう風に振る舞うのか。一度見てみたかった。
『…オーケー。取りあえず上の人に許可貰ってから、また連絡するよ』
「ふふ、楽しみにしてますね。よろしくお願いします」
案外あっさりとご褒美の話が進んで、上機嫌のまま通話を終了させる。
電話口の向こうで、ルイさんが悶絶しているとも知らずに。
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